甲状腺内科
〒662-0834
兵庫県西宮市南昭和町3-4 メヌエットK 1階
TEL:0798-66-2233
トップページ»  甲状腺について

甲状腺と甲状腺の病気

わかりやすくするために専門的ではない言い回しを使いました。

甲状腺とは

 甲状腺は首の前、のど仏のすぐ下にある小さな臓器です。甲状腺に異常のない人では指でさわることができません。甲状腺が大きくなったり、しこりができたりすると指でさわったときにわかるようになります。
 甲状腺は甲状腺ホルモンをつくっています。甲状腺ホルモンは体にとって、とても大切な働きをしています。生まれてから死ぬまでずっと必要なホルモンです。甲状腺ホルモンは主に細胞が働くスピードをコントロールしています。
 甲状腺ホルモンが出すぎると新陳代謝が上がり、心臓がどきどきする、汗をたくさんかく、手がふるえる、食欲が出る、体重が減る、暑がりになるといった症状が出ます。これを甲状腺機能亢進症と言います。
 反対に甲状腺ホルモンが足りなくなると、新陳代謝が下がり、寒がりになる、太りやすくなる、眠たい感じが続く、便秘しやすくなる、皮膚がかさかさになるといった症状が出ます。これを甲状腺機能低下症と言います。

甲状腺とは

甲状腺の病気

甲状腺の病気には大きく分けて2種類あります。

1つ目が血液中の甲状腺ホルモンの濃度に異常(甲状腺ホルモンが上がる、下がる)が出る病気です。
2つめが甲状腺にしこりができる病気です。

甲状腺ホルモンが上がる病気(甲状腺機能亢進症)の代表
1. バセドウ病
2. 無痛性甲状腺炎(むつうせいこうじょうせんえん)
3. 亜急性甲状腺炎(あきゅうせいこうじょうせんえん)
4. プランマー病

甲状腺ホルモンが下がる病気(甲状腺機能低下症)の代表
1. 橋本病(慢性甲状腺炎)の一部
2. 生まれつき甲状腺ホルモンが下がっている
3. 甲状腺の手術を受けた後
4. 甲状腺の病気で放射線治療(放射性ヨード内用療法)を受けた後

甲状腺にしこりができる病気の代表
1. 腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ):良性のしこり
2. 甲状腺にできる癌(甲状腺乳頭癌、甲状腺濾胞癌、甲状腺髄様癌、甲状腺未分化癌)

 

代表的な病気

代表的な病気について説明します。

バセドウ病
症状
甲状腺ホルモンが上がる病気です。心臓がどきどきする、汗をたくさんかく、手がふるえる、食欲が出る、体重が減る、暑がりになるといった症状が出ますが、若い人では体重が増えることもあります。1−2割の人にまぶたがはれたり、目が出てくるという症状がおこります。甲状腺が大きくなることが多いのですが、めだたないこともあります。
原因
人間には免疫(めんえき)という自分をまもる働きがあります。ウイルスやばい菌などの外敵に対して免疫が働き、抗体という物質をつくります。免疫が自分の甲状腺を間違って敵と思ってしまうと、体の中に甲状腺に対する抗体ができます。できた抗体が甲状腺にくっついて甲状腺をたくさん働かせることがあります。これがバセドウ病のおこるしくみです。なぜ自分の甲状腺に対して抗体ができるようになるのかは、まだわかっていません。
診断
血液の中の甲状腺ホルモン(FT4, FT3)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を調べます。また甲状腺を働かせる抗体(TRAb)を調べます。超音波検査(エコー)で甲状腺のはれや、内部の血液の流れを調べます。
治療
甲状腺の働きを抑える薬を使います。2−3ヶ月以内に副作用が出ることがありますので、薬を出してもらっている先生の説明をしっかりと覚えて下さい。じんましんや肝臓の異常、白血球が減ってしまうなどの副作用があります。
経過
甲状腺機能亢進の症状は1から2ヶ月でおさまります。甲状腺ホルモン検査の結果を見ながら薬を少しずつ減らしていきます。約2年の治療で約30%の人が薬を中止できます。5年治療を続けると約40%の人が薬を止めることができます。血液中の甲状腺ホルモンが正常になったら健康な人と同じと考えてよいでしょう。もちろん激しいスポーツもできます。治療中に海藻を制限する必要はありません。
薬を止めることができないときには他の治療法(手術療法や放射性ヨードを用いた治療)に切り替えることもあります。主治医と相談してみましょう。薬を止めることができなくても、高血圧や糖尿病と同じように「コントロールしていく病気である」と考えを切りかえて、気長に治療を続けましょう。

無痛性甲状腺炎
症状
血液中の甲状腺ホルモンが上がりますが、1ヶ月くらいで自然に正常になります。正常になったあと、しばらくすると甲状腺ホルモンが下がってしまうこともあります。甲状腺ホルモンが上がっている間は心臓がどきどきする、汗をたくさんかく、手がふるえる、食欲が出る、体重が減る、暑がりになるといった症状が出ます。甲状腺ホルモンが下がると寒がりになる、太りやすくなる、眠たい感じが続くという症状に変わります。
原因
この病気も免疫が関係していると考えられています。体の中に甲状腺に対する抗体ができて、一時的に甲状腺をこわすため、甲状腺の中にたまっていた甲状腺ホルモンが血液中にもれ出します。そのときは血液中の甲状腺ホルモンが増えますが、しばらくすると自然に甲状腺ホルモンが減ってきて、こわれた甲状腺が回復するまでの間、甲状腺ホルモンが足りなくなるのです。
特徴
出産やストレスが引き金になることがあります。もともと慢性甲状腺炎を持っている人におこりやすいのですが、いつおこるのかの予想はできません。この病気の甲状腺機能亢進症は自然に回復するため、バセドウ病に使われるような甲状腺を抑えるくすりは必要ありません。甲状腺ホルモンが高いときにバセドウ病と間違わないことが大切です。
診断
バセドウ病と同じように血液の中の甲状腺ホルモン(FT4, FT3)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を調べます。また甲状腺を働かせる抗体(TRAb)を調べます。超音波検査(エコー)で甲状腺のはれや、内部の血液の流れを調べます。この病気ではTRAbの値が低くなることが多く、甲状腺内部の血液の流れは少なくなっています。放射性ヨードを用いた検査ができる病院では放射性ヨード摂取率検査を行うと診断がつきます。
治療
甲状腺機能亢進症は自然に回復しますので、安静を保ちながら経過をみます。動悸がひどいときには動悸止めの薬を使います。甲状腺機能低下症になったら甲状腺ホルモン剤を内服します。
経過
この病気になっても多くの人はなおってしまいますが、中にはこわれた甲状腺が元に戻らず、甲状腺機能低下症が続く人がいます。そういう場合は甲状腺ホルモン剤の内服を続ける必要があります。

亜急性甲状腺炎
症状
甲状腺が痛くなる病気です。首の前が痛み、おさえたり、ものを飲み込んだりするときに痛みを感じます。痛みは右から左へというように移動することもあります。痛みと同時に甲状腺ホルモンが上がり、心臓がどきどきする、汗をたくさんかく、手がふるえる、体重が減る、暑がりになるといった症状が出ます。発熱することもあり、ときには38℃を越えます。
原因
甲状腺に炎症がおこるために甲状腺が痛み、熱が出ます。甲状腺がこわれて甲状腺の中にたまっていた甲状腺ホルモンが血液中にもれ出します。ウイルス感染が引き金になっているのではないかと考えられていますが、まだはっきりしていません。
診断
血液の中の甲状腺ホルモン(FT4, FT3)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を調べます。また甲状腺を働かせる抗体(TRAb)とCRP(炎症反応)を調べます。超音波検査(エコー)で甲状腺の炎症像を調べます。この病気ではTRAbの値は低く、CRPの値は高くなります。エコーでは甲状腺内部が炎症のため黒く写ります。
治療
痛みや炎症の程度が軽いときには消炎鎮痛剤(ロキソニンなど)を使って経過をみます。痛みや炎症が強いときには少量のステロイドホルモン剤を内服します。
経過
この病気は3ヶ月間程度で自然になおる病気です。しかし症状がひどいときは普通に生活をすることが難しくなりますのでステロイドによる治療を受けた方が良いでしょう。炎症がなおったあとに一時的に甲状腺機能低下症になることがあります。なおったあとに甲状腺ホルモンを測定することが大切です。

プランマー病
症状
甲状腺ホルモンが上がる病気です。心臓がどきどきする、汗をたくさんかく、手がふるえる、食欲が出る、体重が減る、暑がりになるといった症状が出ます。甲状腺ホルモンの上がり方が少ないため、気がつかれないこともあります。
原因
原因はわかっていませんが、ヨーロッパなどヨード不足の地域に多いことが知られています。
特徴
過機能結節(かきのうけっせつ)ともいいます。甲状腺の中にしこり(結節といいます)ができて、そのしこりが甲状腺ホルモンを多くつくるため血液中の甲状腺ホルモンが多くなります。この病気のしこりはほとんどが良性です。
診断
血液の中の甲状腺ホルモン(FT4, FT3)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を調べます。また甲状腺を働かせる抗体(TRAb)を調べます。超音波検査(エコー)で甲状腺にしこりができていないかを調べます。この病気ではTRAbの値が低くなることが多く、甲状腺にしこりが見つかります。放射性ヨードを用いたシンチ検査を行うと診断がつきます。
治療
しこりが小さいときには放射性ヨード内用療法を行います。海藻制限をしたあとに放射性ヨードのカプセルを内服する方法です。入院する必要もなく、簡単な治療法です。しこりが大きい場合には手術療法が行われます。
経過
治療により甲状腺ホルモン値が正常になれば、健康な人とまったく同じ状態になります。

橋本病(慢性甲状腺炎)
症状
甲状腺が大きくなります。それでも甲状腺機能が正常の場合には症状がありません。甲状腺ホルモンが不足してくると、顔や手足のむくみ、眠気、寒がり、体重増加などの甲状腺機能低下症の症状がみられます。
原因
免疫が関係していると考えられています。体の中に甲状腺に対する抗体ができるため、リンパ球が甲状腺をゆっくりこわしていきます。長い年月がたつと甲状腺がホルモンをつくれなくなります。
特徴
進行すると甲状腺機能低下症を起こすことがあります。慢性甲状腺炎と診断されても一生涯治療の必要がないことも多い病気です。1912年に日本人の橋本医師が初めて報告した病気であるため橋本病と呼ばれています。女性に多い病気です。成人女性の3%以上を占めています。慢性甲状腺炎の自己抗体の保有率は高く、一般人口の15%程度です。
診断
血液の中の甲状腺ホルモン(FT4, FT3)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を調べます。また甲状腺に対する抗体(TPOAb, TgAb)を調べます。超音波検査(エコー)で甲状腺の内部を調べます。
治療
甲状腺機能が正常の場合には治療の必要はありません。甲状腺機能低下症があれば甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の内服が必要になります。海藻類の取りすぎによって甲状腺機能低下症をおこしているときは海藻を制限するだけで甲状腺機能が回復することもあります。
経過
若い人では甲状腺機能低下症がなおってしまうこともありますが、多くの場合、甲状腺ホルモン剤を長期にわたって内服することが必要です。甲状腺ホルモン剤をのみ始めると、約1~2ヶ月で甲状腺ホルモン値が正常になり、自覚症状もなくなります。内服していれば健康な人と全く変わらない生活をおくることができます。
甲状腺ホルモン値が正常になっても何か症状がある場合は、甲状腺以外の病気を考える必要があります。

甲状腺のしこり(結節)
症状
しこり以外には何の症状もありません。普通は痛みもありません。大きくなると美容的に問題になります。
原因
わかっていません。体質的なものと考えて良いでしょう。
特徴
甲状腺は結節(しこり)のできやすい臓器です。結節とは甲状腺にできるしこりの総称で、良性も悪性も含みます。甲状腺に結節を持っている人は一般人口の2割くらいと言われています。多くの人が気づかず普通に生活しています。最近は頸動脈エコー検査を受ける機会が増え、その検査で甲状腺の結節が見つかるようになりました。治療する必要のないような余計なものまで見つかることが問題になっています。
良性の場合はかなり大きくならなければ治療の必要はありません。 癌でも大きさが1cmを超えなければ手術しないで経過を見ることもよく行われています。
診断
甲状腺に結節が見つかった場合には、血液検査で甲状腺ホルモンとサイログロブリン、TgAb(サイログロブリン抗体)を測定します。次に超音波検査(エコー)を行い、どういう性状のものかを調べます。5mm以上で悪性を疑うような所見があれば細胞診を行います。2cm以下で良性の可能性が高ければ細胞診をせずに経過を見ても良いでしょう。
治療
良性結節で甲状腺機能が正常であれば体に全く害はありません。したがって治療の必要はありません。良性の場合は美容的に問題になるときだけ手術します。
細胞診で癌と診断された場合で大きさが1cmを超えていれば手術をします。1cmを超えていなければ、しこりのできている場所を考えた上で経過観察することも可能です。