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バセドウ病の薬はいつやめる?

バセドウ病の薬をやめるときに大切な点は、次の3つです。

  • 抗甲状腺薬は、甲状腺の機能が一定期間安定していることを確認してから、医師の判断で中止します
  • やめた後は、特に最初の1年間、定期的な血液検査が必要です
  • 検査値が一時的に悪化しても、すぐに薬の再開が必要とは限りません。ただし自己判断で様子をみることもできません

薬をやめられるのはどんなときか

バセドウ病の抗甲状腺薬は、飲み始めてすぐにやめられるものではありません。日本甲状腺学会の「バセドウ病治療ガイドライン2019」では、抗甲状腺薬1錠を隔日で飲む状態で、6か月以上にわたって甲状腺の機能が正常に保たれている場合に、休薬を検討してもよいとされています。

同ガイドラインは「メルカゾール5mgを隔日」と記載していますが、その後2.5mg錠が発売されたことを受けて、学会から「5mgを隔日、または2.5mg錠を毎日」と読み替えるよう通知が出ています。2.5mg錠を毎日飲んでいる方も、この目安に当てはまります。

ガイドラインが引用している観察研究では、薬の量を一定期間で区切ってやめるよりも、最小量まで減らしてからやめた方のほうが、その後に薬を再開せずに済む割合が高い傾向が報告されています。最小量で安定していた期間が長い方でも、同じ傾向がみられています。

薬は自己判断で中止したり減らしたりしないでください。やめられる状態かどうかは、飲んでいる薬の量だけでは判断できません。まだ量が多い時期に自己判断で中断すると、甲状腺機能亢進症が戻ってきます。また、やめた後の検査の予定を決めないまま中断すると、変化に気づくのが遅れます。

どのくらいの人が薬を再開せずに済むのか

以下は、一定の休薬の基準を満たした107人を、ひとつの医療機関で後ろ向きに調べた研究の結果です。バセドウ病のすべての方にそのまま当てはまる割合ではありません。

一定の休薬基準を満たした107人における経過
休薬からの期間 薬を再開せずに済んでいた割合
6か月 86.9%
1年 73.8%
2年 68.2%

また、2年以内に再発した34人のうち28人(82.4%)は1年以内に再発していました。やめてから最初の1年が、最も注意が必要な時期です。

やめた後の検査の間隔

薬をやめた後も、定期的な検査が必要です。ガイドライン2019では次のように示されています。中止後の再発が1年以内に起こることが多いためです。

抗甲状腺薬を中止した後の検査の間隔(甲状腺機能が安定している場合)
中止からの期間 検査の間隔
はじめの6か月 2〜3か月おき
6か月〜1年 徐々に間隔を延ばす
1年以降 6〜12か月おき

1年以上にわたって甲状腺の機能が正常であっても、数年後に再発することがあります。また、逆に甲状腺の機能が低下してくることもあります。そのため、少なくとも年に1回は甲状腺の機能を調べることがすすめられています。

やめた後に検査値が悪化しても、すぐに薬の再開が必要とは限りません

薬をやめた後に甲状腺の検査値が悪くなると、多くの方は再発したと考えます。しかし、薬を再開しないまま自然に正常化することがあります。

当院院長らが110人の患者さんを1年以上追跡した研究では、68人(61.8%)が追跡期間中に薬を再開せずに済みました。そしてこの68人のうち28人(41.2%)に、途中で一過性の甲状腺中毒症がみられました。

28人の内訳は、甲状腺ホルモン(FT4)も上がった方が8人、残りの20人はFT4は正常のままTSHだけが下がるという変化でした。一過性の変化は、やめてから3〜6か月の間に多くみられました。

別の研究では、一過性の甲状腺中毒症がみられた22人のうち6人で放射性ヨウ素の摂取率を測定しています。4人は摂取率が下がっておらず、無痛性甲状腺炎では説明できない変化と考えられました。一方2人は摂取率が低く、無痛性甲状腺炎と診断されました。つまり、やめた後に検査値が悪くなる原因はひとつではありません。この研究では22人中16人で、異常が6か月以内に正常化しています。また、一過性の変化のあとに甲状腺機能低下症になった方はいませんでした。

一時的な変化と、治療の再開が必要な再発をどう見分けるか

このページは「検査値が悪くなってもそのまま待てばよい」という意味ではありません。一時的な変化なのか、治療の再開が必要な再発なのかは、検査値の程度、症状、年齢、ほかの病気の有無によって判断が変わります。

1回の検査だけで見分けることはできません。時間の経過とともに数値がどう動くかをみて判断します。

上の表にある2〜3か月という間隔は、甲状腺の機能が安定している場合の目安です。検査値に変化がみられた場合は、医師の判断でより短い間隔で再検査を行うことがあります。

一時的な変化を再発と判断してしまうと、必要のない治療の再開につながることがあります。逆に、再発しているのに様子をみすぎると、症状が強くなります。数値が上がったからといって自己判断で薬を再開せず、また症状がないからといって検査を先延ばしにしないでください。

TRAb陰性は、薬をやめるための必須条件ではありません

バセドウ病では、甲状腺を刺激する自己抗体(TRAb)を測定します。この値が陰性になってから薬をやめたい、と考える方がいます。

一般に、薬をやめる時点でTRAbが陰性の方は、陽性の方より寛解しやすい傾向があります。ただしガイドライン2019では、TRAbが陰性であっても再発する方が30%前後いると報告されており、TRAbだけで個々の方の再発を予測することは難しいとされています。

また、最小量を6か月以上続けている場合には、TRAbが陰性でも陽性でも薬を再開せずに済む割合に差は認められないとされ、陰性になるのを待って休薬する必要はないとされています。ガイドラインは、TRAbを含めて、寛解の状態にあるかどうかを正確に評価できる方法は現在のところないとも述べています。

やめる時期は、TRAbだけでなく、薬の量、その量を続けた期間、TSHやFT4を含む甲状腺の機能、甲状腺の大きさ、症状、これまでの経過をあわせて決めます。

TRAbという検査そのものの見方や、測定法の世代によって数字が変わる理由はTRAbとはでまとめています。

治療の再開が必要と判断された場合

再発と判断された場合は、抗甲状腺薬による治療を再開することが多くなります。

バセドウ病治療ガイドライン2019では、1回目の再発で抗甲状腺薬を再開した場合、その後に薬を再開せずに済む割合は、初めて治療したときと差がないとされています。一方、2回以上再発を繰り返した場合にはその割合が低下するため、今後の治療方法を改めて検討します。

選択肢には、抗甲状腺薬の再開と継続、放射性ヨウ素を用いた治療(アイソトープ治療)、手術があります。最小量前後の抗甲状腺薬で甲状腺の機能が安定していて、副作用のない方では、少ない量の薬を長く続けることも選択肢になります。

一方、甲状腺の腫れが大きい場合は薬で寛解する割合が低く再発もしやすいこと、抗甲状腺薬を1年半から2年ほど続けても休薬の見通しが立たない場合は、手術やアイソトープ治療への変更を考える時期であることが、同ガイドラインに示されています。治療法は、年齢、妊娠の希望、目の症状、甲状腺の大きさ、ほかの病気、ご本人の希望をふまえて決めます。

当院では、アイソトープ治療や手術が必要と判断される場合、隈病院にご紹介しています。

再発に影響する可能性があるもの

喫煙
ガイドライン2019では、喫煙がバセドウ病の発症リスクを上げ、抗甲状腺薬による治療への抵抗性を生じさせ、さらに寛解した後の再発率を上げるとされています。甲状腺の目の症状(甲状腺眼症)についても、発症のリスクと治療への抵抗性を上げるとされ、すべてのバセドウ病の患者さんに禁煙が強くすすめられています。

ストレスや体調の変化
精神的・身体的なストレスや感染などが、バセドウ病の悪化に関係する可能性が指摘されています。ただしこれを調べた研究は観察研究が中心で、ガイドライン自身もエビデンスのレベルは中程度から低いとしています。個々の方の再発の原因を特定できるものではなく、ご本人の努力が足りなかったために再発するというものでもありません。

ストレスを完全になくすことはできないため、睡眠を十分にとり、無理のない生活を心がけます。必要な手術や抜歯を自己判断で延期する必要はありませんが、甲状腺の機能が安定していない時期は、甲状腺を診ている医師と、処置を担当する医師の両方にご相談ください。

受診の目安となる症状

薬をやめた後、次のような症状が出てきた場合は、次の予約を待たずにご相談ください。

  • 動悸がする、脈が速い
  • 手がふるえる
  • 体重が減ってきた
  • 汗をかきやすい、暑がりになった
  • 疲れやすい、体がだるい
  • 目が出てきた、物が二重に見える、目の奥が痛む、見え方が変わった

血液中の甲状腺ホルモンが多い状態に、高熱、強い動悸や息苦しさ、意識がもうろうとするといった症状が重なった場合は、甲状腺クリーゼと呼ばれる緊急治療を要する状態の可能性があります。

症状がまったくないまま数値だけが動くこともあります。症状がないことは、検査を受けなくてよい理由にはなりません。

バセドウ病の病気そのものや、診断・治療の全体については別のページで説明しています。

出典

このページの執筆者

窪田純久(くぼたクリニック院長・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医・評議員)
窪田創大(医師・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医、日本内分泌学会専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医)

院長・窪田純久は「バセドウ病治療ガイドライン2019」の作成委員を務めました。以前、抗甲状腺薬を中止した後に甲状腺の検査値が一時的に悪化しても、薬を再開せず正常化する例があることを報告しました。その後の前向き研究では、110人のうち68人が追跡期間中に薬を再開せずに済み、その68人中28人(41.2%)に一過性の変化がみられました(論文と院長による解説)。

院長は、甲状腺を専門としない医師に向けた専門書『やさしく解説 甲状腺疾患の診断と治療』(南江堂、改訂第2版・2025年)も執筆しています。

  • 執筆した医師の経歴などがある医師紹介はこちら
  • 院長自身による日本語の解説をつけた英文論文18編はこちら

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