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甲状腺疾患について

わかりやすくするために専門的ではない言い回しを使いました。

甲状腺の病気について、はじめに知っておいていただきたい点は次の3つです。

  • 甲状腺の病気は大きく「甲状腺ホルモンの濃度に異常が出る病気」と「甲状腺にしこりができる病気」の2つに分かれます
  • ホルモンが出すぎる病気と足りなくなる病気とでは、症状がほぼ正反対になります
  • どの病気かは血液検査と超音波検査(エコー)で調べます。当院では甲状腺の血液検査を院内で行っており、採血後約1時間で結果をご説明します

 このページは、気になる症状から探す入口と、病気ごとの説明を兼ねています。症状から見ていく方は「どんな症状から気づくことが多いか」から、病気の名前がすでに分かっている方は「甲状腺ホルモンの濃度異常」「甲状腺のしこり」からお読みください。

このページの内容

甲状腺とは

 甲状腺は首の前、のど仏のすぐ下にある小さな臓器です。甲状腺に異常のない人では指でさわることができません。甲状腺が大きくなったり、しこりができたりすると指でさわったときにわかるようになります。
 甲状腺は甲状腺ホルモンをつくっています。甲状腺ホルモンは体にとって、とても大切な働きをしています。生まれてから死ぬまでずっと必要なホルモンです。甲状腺ホルモンは主に細胞が働くスピードをコントロールしています。
 甲状腺ホルモンが多くなると新陳代謝が上がり、心臓がどきどきする、汗をたくさんかく、手がふるえる、食欲が出る、体重が減る、暑がりになるといった症状が出ます。この状態を甲状腺中毒症と言い、そのうち甲状腺がホルモンをつくりすぎている場合を甲状腺機能亢進症と言います。
 反対に甲状腺ホルモンが足りなくなると、新陳代謝が下がり、寒がりになる、太りやすくなる、眠たい感じが続く、便秘しやすくなる、皮膚がかさかさになるといった症状が出ます。これを甲状腺機能低下症と言います。

どんな症状から気づくことが多いか(症状から探す)

 甲状腺の病気は、はっきりした症状が出ないまま健康診断で見つかることも少なくありません。上に挙げた症状のほかに、次のようなことで気づかれる方もいます。
 ただし、ここに挙げた症状は甲状腺以外の原因でも起こります。これだけで病気を決めることはできませんので、目安としてご覧ください。

甲状腺ホルモンが出すぎているとき
イライラする、落ち着かない、寝つきが悪い、便がゆるくなる、生理の量が減る

 

甲状腺ホルモンが足りないとき
顔や手足がむくむ、髪が抜ける、物忘れが増える、声がかすれる、動作がゆっくりになる、月経が乱れる、気分が落ち込む

 

甲状腺にしこりがあるとき
首の前がふくらんでいる、飲み込むときに違和感がある、首の前を押すと痛い(痛みが出るのは一部の病気だけです)

 気分の落ち込みや物忘れが前に出ると、甲状腺の病気とは気づかれにくくなります。だるさや疲れやすさが続いている場合の考え方は、だるい・疲れやすいのは甲状腺?で説明しています。健康診断でTSHの異常を指摘された方は、健診でTSHの異常を指摘された方へをご覧ください。

 症状から甲状腺の病気を探したい方は、上の3つの表が入口です。あてはまる項目から、下の「甲状腺ホルモンの濃度異常」「甲状腺のしこり」へお進みください。だるさ・疲れやすさについては、原因の見分け方と検査の考え方をだるい・疲れやすいのは甲状腺?でくわしく説明しています。

「甲状腺ホルモンの濃度異常」と「甲状腺のしこり」

 甲状腺の病気には大きく分けて2種類あります。1つ目が、血液中の甲状腺ホルモンの濃度に異常(甲状腺ホルモンが上がる、下がる)が出る病気です。2つ目が、甲状腺にしこりができる病気です。

甲状腺ホルモンの濃度異常

 甲状腺ホルモンが上がる病気には、次のようなものがあります。見分ける考え方は甲状腺機能亢進症とはでまとめています。

血液中の甲状腺ホルモンが多くなる病気の代表
1. バセドウ病
  バセドウ病の薬をやめる目安と中止後の経過
2. 無痛性甲状腺炎(むつうせいこうじょうせんえん)
3. 亜急性甲状腺炎(あきゅうせいこうじょうせんえん)
4. プランマー病

 同じように甲状腺ホルモンが上がっていても、病気によって経過も治療も違います。おおまかな見分けどころは次のとおりです。
 バセドウ病は、免疫の異常によってつくられた抗体が甲状腺全体を刺激し、甲状腺ホルモンをつくりすぎる病気です。20〜40代の女性に多くみられますが、男性や高齢の方にも起こります。治療によって甲状腺ホルモンが正常に保たれていれば、通常の生活を送れます。
 無痛性甲状腺炎(むつうせいこうじょうせんえん)は、甲状腺にたくわえられていたホルモンが一時的に血液中へもれ出る状態です。名前のとおり痛みはありません。自然に回復に向かいますが、正常になったあと、しばらくして甲状腺ホルモンが下がる時期を経る方もいます。少数の方では、そのまま甲状腺ホルモンが足りない状態が続きます。出産後をきっかけに起こる方もいます。
 亜急性甲状腺炎(あきゅうせいこうじょうせんえん)も一時的にホルモンがもれ出る病気ですが、こちらは首の前が痛みます。熱が出ることもあり、痛みは右から左へというように移動することもあります。
 プランマー病は、甲状腺にできたしこり(結節)が、脳からの指示とは関係なく甲状腺ホルモンをつくる病気です。結節の多くは良性です。

 

血液中の甲状腺ホルモンが少なくなる病気の代表
1. 橋本病(慢性甲状腺炎)の一部
2. 生まれつき甲状腺ホルモンが下がっている
3. 甲状腺の手術を受けた後
4. 甲状腺の病気で放射線治療(放射性ヨード内用療法)を受けた後

 ホルモンが少なくなる状態の全体像は甲状腺機能低下症とはにまとめています。

 甲状腺ホルモンが足りなくなる原因で最も多いのは橋本病(慢性甲状腺炎)です。ただし橋本病の方が全員ホルモン不足になるわけではなく、多くの方は甲状腺の働きが保たれています。
 生まれつき甲状腺ホルモンが足りない状態を先天性甲状腺機能低下症と言い、その多くは自治体が行う新生児のマススクリーニング検査で見つかります。
 甲状腺の手術を受けた後は、術式によって管理が変わります。甲状腺をすべて摘出した場合(全摘術)は甲状腺ホルモン剤を続けて飲みますが、片側だけを摘出した場合(葉切除術)は薬が必要にならない方もいれば、必要になる方もいます。放射性ヨード内用療法(アイソトープ治療)を受けた後にホルモンが下がることもあります。甲状腺がんの手術を受けた後の管理については、甲状腺がんの術後管理で説明しています。
 薬を飲む場合は、量が合っているかを定期的に血液検査で確かめながら続けていきます。

 

妊娠と甲状腺
妊娠と甲状腺(バセドウ病・橋本病の妊娠中の管理)

甲状腺のしこり

甲状腺にしこりができる病気の代表
1. 腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ):良性のしこり
2. 甲状腺にできるがん(甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がん、甲状腺髄様がん、甲状腺未分化がん)
3. 甲状腺がんの術後管理

 甲状腺のしこりは、その多くが良性です。しこりが見つかったからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。
 しこりの性質は、まず超音波検査で調べます。「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024」では、大きさと超音波の所見にもとづいて、細い針で細胞をとって調べる穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)を行うかどうかが整理されています。結節があれば必ず行うわけではありません。その目安は甲状腺結節(しこり)で説明しています。
 甲状腺がんにはいくつかの種類があります。最も多い乳頭がんや、次に多い濾胞がんは、病状によって差はありますが、比較的ゆっくり進み、良好な経過が期待できるものが多くあります。一方、髄様がん、低分化がん、未分化がんでは、治療方針や経過が異なります。
 当院では穿刺吸引細胞診・アイソトープ治療・手術は行っておりません。これらが必要と判断される場合は、甲状腺疾患の専門病院である隈病院をご紹介しています。

まぎらわしい病気の見分け方

 甲状腺の病気には、症状や血液検査の結果が似ていて、区別が必要なものがあります。治療方針がまったく異なるため、最初の見極めが大切です。

区別が必要な組み合わせ
バセドウ病と無痛性甲状腺炎 どちらも甲状腺ホルモンが上がりますが、治療の考え方が違います。バセドウ病は薬でホルモンをつくりすぎるのを抑えますが、無痛性甲状腺炎は自然に回復に向かうため、原則として抗甲状腺薬は使いません。血液検査での抗体の測定や超音波検査、経過をみることで区別していきます。これらだけでは判断が難しい場合に甲状腺シンチグラフィという検査を行うことがあり、必要と判断される場合は隈病院をご紹介しています
バセドウ病とプランマー病 どちらも甲状腺ホルモンが上がりますが、バセドウ病は甲状腺全体が、プランマー病はしこりの部分がホルモンをつくります。原因も治療の考え方も異なります。くわしくはプランマー病をご覧ください
亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎 どちらも一時的にホルモンがもれ出ますが、首の前の痛みがあるかどうかが大きな手がかりになります
橋本病と甲状腺機能低下症 橋本病は病気の名前、甲状腺機能低下症はホルモンが足りない「状態」を指す言葉です。橋本病の方が全員、機能低下症になるわけではありません
更年期の症状との重なり 汗をかく、動悸がする、イライラするといった症状は、甲状腺の病気でも更年期でも起こります。まず血液検査で甲状腺の働きを確認します。両方が重なっている方もいます

甲状腺の病気はどのように調べるか

 甲状腺の検査は、大きく血液検査と超音波検査(エコー)の2つです。
 血液検査では、TSH、FT4、FT3を測って今の甲状腺の働きが強いのか弱いのかを調べます。必要に応じて甲状腺に対する抗体(TPOAb, TgAb, TRAb)も調べます。
 超音波検査(エコー)は、甲状腺の大きさ、しこりの有無、内部の変化など、形を確認する必要がある場合に行います。痛みはなく、所要時間は約15分です。
 当院では甲状腺の血液検査を院内で行っており、採血後約1時間で結果をご説明します。検査結果を聞くためだけに、再度ご来院いただく必要はありません。
 検査結果の数値の見方は、検査を行った施設によって基準となる範囲が少し異なります。ご自身の結果票に書かれている基準範囲と照らしてご覧ください。

 それぞれの検査で何を調べるのか、細胞診など専門施設で行う検査までは、甲状腺の検査案内でまとめています。

受診の目安

 次のような場合は、当院を含め、甲状腺を診療している医療機関へご相談ください。

  • 健康診断や人間ドックで、甲状腺の数値や首のしこりについて指摘された
  • 首の前がふくらんでいる、しこりにさわれる
  • しこりが急に大きくなった、痛みが出た、声がかすれてきた
  • 上に挙げた症状がいくつも重なって続いている
  • ご家族に甲状腺の病気の方がいて、ご自身も気になる症状がある
  • 妊娠を考えている、または妊娠中の甲状腺機能について相談したい

 当院は完全予約制です。ご予約はお電話(0798-66-2233)で承っています。初診の流れとお持ちいただくものは、受診案内をご覧ください。

あわせてご覧ください

このページの執筆者

窪田純久(くぼたクリニック院長・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医・評議員)
窪田創大(医師・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医、日本内分泌学会専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医)

院長・窪田純久は、甲状腺を専門としない医師に向けた専門書『やさしく解説 甲状腺疾患の診断と治療』(南江堂、改訂第2版・2025年)の著者です。日本甲状腺学会において、バセドウ病薬物治療・バセドウ病眼症診療・甲状腺結節診療・潜在性甲状腺機能低下症の各診療ガイドライン作成委員を務めています。

  • 執筆した医師の経歴などがある医師紹介はこちら
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