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お子さんの甲状腺

お子さんの甲状腺について、はじめに知っておいていただきたい点は次の3つです。

  • 子どもにも甲状腺の病気は起こります。ただし大人とは現れ方が違います
  • 子どもでも、多汗、疲れやすさ、手のふるえ、体重減少などがみられます。一方で落ち着きのなさ、学力の低下、身長の伸び方の変化など、学校生活や成長の変化として気づかれる場合もあります
  • 当院で診療できるのは、採血を受けていただける年齢からです。目安は小学生以上です

子どもの甲状腺の病気は、大人と現れ方が違います

 日本甲状腺学会の甲状腺疾患診断ガイドライン2024は、バセドウ病について「小児では学力低下、身長促進、落ち着きの無さなどを認めることが多い」と記しています。こうした変化は思春期の特徴とも重なるため、甲状腺が原因として思い浮かびにくい面があります。

 同じガイドラインは、甲状腺ホルモンが足りない側についても「小児では成長障害や甲状腺腫を認める」としています。身長の伸びが鈍る、あるいは首が腫れるという形で気づかれます。ホルモンが足りなくなる代表的な病気は橋本病です。

 日本小児内分泌学会も、小児のバセドウ病では落ち着きがない、集中力の低下、学力低下、情緒不安、不眠といった神経・精神の症状と、全身のだるさ、疲れやすさ、身長の伸びの促進が認められると説明しています。首の腫れについては甲状腺の検査案内、局所的なしこりについては甲状腺結節(しこり)、ホルモンが多くなる仕組みは甲状腺機能亢進症もご覧ください。

 年代ごとの関わり方は年代・ライフステージ別にみる甲状腺の病気の「お子さん・思春期」にまとめています。

何歳ごろに多いのか

 日本小児内分泌学会と日本甲状腺学会が共同で作成した「小児期発症バセドウ病診療のガイドライン2016」は、5歳以下の発症は極めてまれで、11歳から15歳にかけて年齢とともに増え、高校生で発症のピークを迎えるとしています。女の子に多くみられます。

 つまり、気をつけたいのは学童期の後半から高校生にかけてということです。ちょうど、体つきも生活も大きく変わる時期にあたります。

 日本小児内分泌学会は、「小児における好発年齢は思春期以降ですが、幼児例も認められます。15歳未満の発症は約5%です」と説明しています。バセドウ病の患者さん全体のうち、15歳未満で発症する方は約5%、ということです。

 どんな症状で気づかれるのかについては、ガイドラインが小児のバセドウ病でみられた症状の割合を示しています。多い順に甲状腺の腫れ68.4%、多汗53.4%、疲れやすさ50.4%、落ち着きのなさ47.4%、手のふるえ45.1%、眼球突出38.3%、体重減少36.1%、脈が速い33.8%、動悸24.8%、学業成績の低下24.1%です。見て分かるものと、生活の様子として現れるものが混ざって並びます。

 大人との違いも示されています。同じガイドラインは、成人では体重減少が61%にみられるのに対し「小児では成人と異なり、体重減少は多くない」とし、さらに「思春期では体重増加が生理的な変化であり、体重が増加しないというだけでも有意な所見と考える」としています。

気づかれるまでに時間がかかります

 同じガイドラインは、思春期を迎える前のバセドウ病は症状が多彩で、気づかないまま見過ごされることも多く、発症から診断までに6〜12か月かかることが多いと述べています。

 症状が「その年頃らしさ」で説明できてしまうことが理由です。落ち着きがない、成績が下がった、部活がきつい、よく眠れない。どれも思春期の変化として受け取れるものばかりです。

 手がかりのひとつが成長曲線です。ガイドラインは、成長曲線を作ることで発症の時期を推し量れる場合があるとしています。母子健康手帳や学校で記録された身長・体重の記録は、診察のときに役立ちます。お持ちであればご持参ください。

治療の考え方も、大人とは違います

 小児期発症バセドウ病診療のガイドライン2016は、小児では抗甲状腺薬による薬物治療が第一選択であるとしています。

 使う薬の種類にも決まった考え方があります。同じガイドラインは、チアマゾール(メルカゾール)を第一選択薬とするとしています。もう一方の抗甲状腺薬であるプロピルチオウラシル(チウラジール、プロパジール)については、小児に使う場合は重い肝機能障害が起こる可能性を十分に説明し、同意を得たうえで慎重に投与するとしています。

 すでにプロピルチオウラシルを服用しておられる場合でも、ご自身の判断で中止しないでください。チアマゾールで副作用が出た、といった理由でこちらが選ばれている場合があり、処方には理由があります。気になる点は、処方を受けている医療機関にご相談ください。副作用を疑う症状がある場合の対応は、次に説明します。

 なお、抗甲状腺薬には副作用があります。日本小児内分泌学会は「5%に皮疹、0.1〜0.2%に白血球の減少や無顆粒球症が生じることがあります。これらの副作用は服用開始から3か月以内に発現することが多く」と説明しています。抗甲状腺薬を服用中に発熱やのどの痛みが出たときは、無顆粒球症などを確認するため、白血球の検査が必要になる場合があります。服用を続けるかどうかを含め、すぐに処方を受けている医療機関へご連絡いただき、指示を受けてください。

 放射性ヨウ素を用いる治療(アイソトープ治療)については、日本小児内分泌学会が「原則的に18歳以下では行われていない」と説明しています。

 学校生活についても示されています。同学会は、治療を始めて甲状腺の働きが改善するまでは安静が必要で、学校に通う場合でも体育や部活動は休みとし、甲状腺の働きが正常になれば日常生活の制限は解除されるとしています。ガイドラインには、受験などの学生生活を考慮して治療を続けるという考え方も示されています。治療の進め方は、学校の予定とあわせて相談できるものだとお考えください。

当院で診療できる年齢

 当院で診療できるのは、採血を受けていただける年齢からです。目安は小学生以上で、成長の度合いによります。乳幼児から未就学のお子さんについては、小児科や小児内分泌を専門とする施設が主な相談先です。

 当院では甲状腺ホルモンと甲状腺自己抗体を院内で測定しており、採血後約1時間で結果をご説明します。それぞれの検査で何を調べているのかは甲状腺の検査案内にまとめています。

 受付時間や持ち物などは受診案内を、どの科を受診すればよいか迷われたときは甲状腺の不調は何科?をご覧ください。

よくあるご質問

成績が下がったことと甲状腺が関係することがあるのですか
あります。日本甲状腺学会の診断ガイドラインが、小児のバセドウ病の特徴として学力低下を挙げています。ただし成績の変化には多くの原因がありますので、これだけで甲状腺と決まるものではありません。首の腫れ、汗の多さ、疲れやすさ、身長の伸び方の変化などとあわせて考えます。

背が伸びすぎているのですが、問題でしょうか
甲状腺ホルモンが多い状態では、身長の伸びが一時的に速くなることがあります。ガイドラインには、骨の成熟も進むため、最終的な身長には影響しないと記されています。気になるときは成長の記録をお持ちのうえご相談ください。

部活は続けられますか
日本小児内分泌学会は、甲状腺の働きが改善するまでは体育や部活動を休むこととし、正常になれば制限を解除するとしています。いつから再開できるかは、検査の値と経過を見て判断します。

親が甲状腺の病気です。子どもも調べたほうがよいですか
ご家族に甲状腺の病気の方がおられる場合、お子さんに気になる様子があれば調べる意味があります。ただし、症状がまったくないお子さん全員に検査をすすめるものではありません。家族に甲状腺の病気の人がいる方へもご覧ください。

出典

このページの執筆者

窪田純久(くぼたクリニック院長・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医・評議員)
窪田創大(医師・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医、日本内分泌学会専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医)

院長・窪田純久は、甲状腺を専門としない医師に向けた専門書『やさしく解説 甲状腺疾患の診断と治療』(南江堂、改訂第2版・2025年)の著者です。日本甲状腺学会において、バセドウ病薬物治療・バセドウ病眼症診療・甲状腺結節診療・潜在性甲状腺機能低下症の各診療ガイドライン作成委員を務めています。

  • 執筆した医師の経歴などがある医師紹介はこちら
  • 院長自身による日本語の解説をつけた英文論文18編はこちら

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