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超音波検査(エコー)

甲状腺の超音波検査(エコー)について、はじめに知っておいていただきたい点は次の3つです。

  • 首にゼリーをつけ、小さな機械をあてて甲状腺を画像で見る検査です。痛みはなく、所要時間は約15分です。放射線を使わないため、妊娠中の方でも受けていただけます
  • エコーで分かるのは甲状腺の「形」です。「働き」は血液検査で、しこりの良性・悪性については、エコー所見から可能性を評価し、必要に応じて細胞診で詳しく調べます
  • 当院では超音波検査を院内で行っており、医師が自分で機械をあてて見ます。結果は当日中にご説明します

超音波検査(エコー)はどのような検査か

 超音波検査(エコー)は、耳には聞こえない高い音を首にあて、その反射を画像にして甲状腺の形を見る検査です。のどぼとけのすぐ下にある甲状腺は皮膚に近いため、超音波で細かいところまでよく見える臓器です。

 検査では、リクライニングの椅子に座っていただき、背もたれを倒して、あごを少し上げた姿勢で首元を出していただきます。診察台に移っていただく必要はありません。首にゼリーをつけ、プローブと呼ばれる小さな機械をあてて、画面に映る甲状腺を見ていきます。プローブは左右・上下と角度を変えながら動かし、必要なところで画像を止めて大きさを測ったり、血流を確かめたりします。

 当院では、問診と診察のうえで必要と判断した場合に、当日に行っています。検査全体の案内は甲状腺の検査案内にまとめています。

受ける前に知っておいていただきたいこと

痛みはありません

 ゼリーをつけたプローブを首にあてるだけで、針を刺すことも、薬を使うこともありません。プローブで押されるときに軽い圧迫を感じることはありますが、痛みを伴う検査ではありません。

所要時間は約15分です

 検査そのものにかかる時間です。首の状態によって多少前後します。

放射線を使わないため、被ばくはありません

 超音波は音であり、放射線ではありません。日本超音波医学会も、被ばくの心配がなく、妊娠中の方や胎児にも安全とされている検査であると説明しています。妊娠中の方、妊娠の可能性がある方でも受けていただけます。放射線を使わないため、何度受けても放射線被ばくの心配はありません(妊娠と甲状腺の病気)。

服装は、首まわりがあいたものが便利です

 首全体にゼリーをつけますので、前開きの服や、襟元がゆったりした服装だと検査がスムーズです。ネックレスは外していただきます。

特別な準備は要りません

 食事の制限はなく、食事をとってからお越しいただけます。ただし、脂質や血糖など甲状腺以外の血液検査を同時に行う場合は絶食が必要になることがありますので、担当医師にお尋ねください。甲状腺のお薬を飲んでおられる方も、検査のために飲み方を変える必要はありません。血液検査もあわせて行う場合の注意点は、甲状腺の検査案内に書いています。

検査のあとに制限はありません

 検査が終わったらゼリーを拭き取り、そのまま普段どおりに過ごしていただけます。ゼリーは水のように拭き取れるもので、肌に残っても害はありません。

結果は当日中にご説明します

 当院では、検査をしながら画面を見ていただき、その場でご説明します。血液検査もあわせて行った場合は、採血後約1時間で出る結果と合わせて、診察室で改めてご説明します。結果を聞くために、別の日にご来院いただく必要はありません(受診案内)。

エコーで見ているものと、医師が判断している順序

 当院では、診察する医師が自分でプローブをあてて画像を見ます。首をさわった感触、これまでの経過、血液検査の結果を思い浮かべながら、その場で確かめたいところを見ていきます。

 画面に映る甲状腺を、私たちはおおよそ次の順序で見ています。

1. 甲状腺全体の大きさと形

 甲状腺は蝶が羽を広げたような形をしていて、右葉(うよう)・左葉(さよう)と、それをつなぐ峡部(きょうぶ)からなります。まず、全体が腫れているか、その程度はどのくらいか、左右に差がないかを見ます。病気の種類によって、大きくなるものも、逆に小さくなるものもあります。

2. 内部の見え方

 健康な甲状腺の内部は、均一な明るさに映ります。炎症が起きていると、黒っぽく見えたり、まだらに見えたりします。この写り方が、炎症の有無や種類を考える手がかりになります。

3. しこり(結節)の有無と性状

 しこりがある場合は、大きさ、数、位置に加えて、形がいびつでないか、境界がはっきりしているか、内部が黒っぽくないか、細かい白い点がないかを1つずつ見ます。これらは良性か悪性かを推定するための所見で、次に細胞診が必要かどうかを判断する材料になります(甲状腺結節(しこり)のページ)。

4. 血流

 カラードプラという方法で、甲状腺の中を流れる血液を色で表示します。全体の血流が増えているか、しこりの中に血流が入り込んでいるかを見ます。血液検査だけでは区別しにくい「ホルモンのつくりすぎ」と「もれ出し」を見分ける手がかりのひとつです。

5. まわりのリンパ節

 腫れたリンパ節がないか、あるとすればどのような見え方かを確かめます。甲状腺がんの手術を受けたあとの経過観察でも、この部分を確認します(甲状腺がんの手術後の経過観察)。

病気によって、エコーはどう見えるか

 次に挙げるのは典型的な見え方です。例外があり、所見だけで病気は決まりません。血液検査、症状、経過とあわせて判断します。

  • 橋本病(慢性甲状腺炎)… 内部が通常より黒っぽく、まだらに見えます(エコー低下や不均質)。「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」でも診断の手がかりのひとつに挙げられています
  • バセドウ病… 甲状腺全体が腫れ、血流が増えていることが多くみられます
  • 無痛性甲状腺炎… 甲状腺ホルモンが多くなっているのに、内部の血流は少ないことが多く、バセドウ病との見分けに用います
  • 亜急性甲状腺炎… 痛みのある部分に一致して、内部が黒く写る領域がみられます
  • 甲状腺結節(しこり)… 中に液体がたまった「のう胞」と、細胞がつまった「充実性」のしこりでは見え方が異なります
  • 機能性結節(プランマー病)… しこりがあることは分かりますが、それがホルモンをつくっているかどうかは、見た目だけでは分かりません

 ホルモンが多いときに「つくりすぎ」か「もれ出し」かを見分ける流れは、甲状腺機能亢進症のページで説明しています。

エコーでは分からないこと

 エコーは甲状腺の「形」を見る検査です。形から分かることには限りがあります。次の点は、エコーとは別の検査で確かめます。

甲状腺の「働き」

 甲状腺ホルモンが多いのか少ないのかは、エコーでは分かりません。血液検査でTSH・FT4・FT3を測って確かめます。

しこりが良性か悪性かの確定

 エコーの所見からは「良性らしい」「悪性を疑う」という推定まではできます。日本超音波医学会の「甲状腺結節(腫瘤)超音波診断基準」にも、良性の所見を示す悪性のしこりや、逆に悪性のように見える良性の病気(亜急性甲状腺炎など)があることが付記されています。必要に応じて、細い針でしこりの細胞を採って顕微鏡で調べる穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)を行います。しこりがあれば必ず行うわけではなく、大きさと超音波の所見に応じて判断します。細胞診は乳頭がんの診断などに有用ですが、すべてのしこりを確定できるわけではありません。濾胞腺腫と濾胞がんなど、細胞診だけでは区別できないものもあります。当院では血液検査と超音波検査までを行い、細胞診が必要な場合は隈病院をご紹介しています。細胞診で分かること・分からないことは甲状腺結節(しこり)のページにまとめています。

しこりがホルモンをつくっているかどうか

 これを確かめるには、甲状腺シンチグラフィという検査を用います。当院では行っておらず、必要と判断される場合は隈病院をご紹介しています(プランマー病のページ)。

胸の奥への広がり

 超音波は、空気や骨の奥を見るのが苦手な検査です。甲状腺が胸の奥へ伸びている場合、その先はエコーでは見えにくく、CTが必要になることがあります。当院ではCTを行っていないため、必要と判断される場合はご紹介しています。なお、CT・MRI・PETは、しこりが良性か悪性かを判断する目的では第一選択にはなりません。

結果の説明に出てくる言葉

 超音波検査の結果をご説明するとき、次のような言葉を使います。

  • びまん性(びまんせい)… 一部ではなく、甲状腺全体に変化が及んでいることです。「びまん性に腫れている」は、甲状腺全体が大きくなっているという意味です
  • 結節(けっせつ)… 甲状腺の中にできたしこりのことです。良性も悪性も含む言葉で、「結節がある」だけでは悪性という意味ではありません
  • のう胞(のうほう)… 中に液体がたまったしこりです。当院の院長は、小さなのう胞が甲状腺に多発して甲状腺機能低下症の原因となる病態を報告しています(論文と院長による解説)
  • 充実性(じゅうじつせい)… 液体ではなく、細胞がつまったしこりです。のう胞と充実性の部分が混ざったものもあります
  • 低エコー・不均質… 内部が通常より黒っぽく見える(低エコー)、まだらに見える(不均質)という意味です
  • 石灰化(せっかいか)… カルシウムが沈着して白く見える部分です。大きなものは良性でも悪性でもみられますが、細かい点状のものは悪性を疑う所見のひとつです
  • 血流増加… カラードプラで血流が多く表示される状態です。甲状腺全体ならバセドウ病を考える材料になります。しこりの中の血流は、大きさ、形、境界、内部の見え方などとあわせて、細胞診が必要かどうかを考える材料の一つになります

 しこりの大きさや所見によって細胞診を行うかどうかの目安は、甲状腺結節(しこり)のページに載せています。

血液検査とエコーの結果が食い違うとき

 2つの検査は別のものを見ているため、結果が「食い違う」ように感じられることがあります。

 たとえば、エコーでしこりが見つかっても、血液検査で甲状腺の働きは正常ということはよくあります。しこりがあること自体は、働きに影響しないことが多いためです。反対に、血液検査でホルモンの異常があるのに、エコーで形に大きな変化がないこともあります。この場合は、自己抗体、症状、時間をおいた経過から原因を絞り込みます。自己抗体が陰性だったときの考え方は抗体が陰性でも甲状腺の病気のことがありますで、血液検査の値が症状や経過と合わない場合は甲状腺の検査値と症状・経過が合わないときで説明しています。

 血液検査とエコーは、異なる情報を補い合う検査です。症状や受診のきっかけに応じて必要な検査を組み合わせることで、甲状腺の状態をより詳しく評価できます(甲状腺の検査案内)。

「甲状腺が腫れている」「しこりがある」と言われた方へ

 次のような状態のときは、甲状腺を診療している医療機関で超音波検査を受けることをおすすめします。

  • 健診で「甲状腺が腫れている」「甲状腺に所見がある」と言われた
  • 頸動脈のエコーや、ほかの目的で受けたCTで、たまたま甲状腺のしこりを指摘された
  • のどぼとけの下あたりに、ふくらみやしこりを触れる
  • 健診でTSHなど血液検査の異常を指摘された。この場合は血液検査が中心で、必要に応じて超音波検査を行います(健診でTSHの異常を指摘された方へ)

 首には甲状腺のほかにもリンパ節や唾液腺(だえきせん)があり、さわっただけでは腫れの由来は分かりません。超音波検査で、腫れが甲状腺によるものか、中にしこりがあるか、その性状はどうかを確かめます。どの診療科を受診すればよいかは甲状腺の不調は何科を受診すればよいかでまとめています。

 受診の際は、健診の結果票や、以前に受けた超音波検査の画像・報告書があればお持ちください。以前の画像と並べることで、しこりの大きさが変わっているかどうかが分かります。

 当院では、問診と診察のうえで必要な検査を当日に行っています。超音波検査は院内で実施し、血液検査とあわせて結果を当日中にご説明します。穿刺吸引細胞診や手術が必要と判断される場合は、隈病院をご紹介しています。

よくあるご質問

Q.検査にはどのくらい時間がかかりますか。

 超音波検査そのものは約15分です。血液検査もあわせて行う場合は、結果が出るまで採血後約1時間お待ちいただきます。受付から会計までの所要時間の目安は受診案内をご覧ください。

Q.妊娠中でも受けられますか。

 受けていただけます。放射線を使わない検査で、妊娠中の方や胎児にも安全とされています。

Q.子どもも受けられますか。

 超音波検査そのものは、年齢を問わず受けられる検査です。ただし当院では、採血が可能な年齢から診療しています。目安は小学生以上ですが、成長の度合いにもよります。未就学のお子さまについては、小児科や専門施設へご相談ください。

Q.通院中は、毎回エコーを受けるのですか。

 毎回ではありません。間隔は、病気の種類、しこりの有無と大きさ、治療の段階によって異なります。血液検査だけで経過をみる時期もあれば、しこりの大きさの変化を確かめるために超音波検査を行う時期もあります。

Q.症状はないのに、健診のエコーでしこりを指摘されました。調べる必要はありますか。

 甲状腺のしこりは、超音波検査を受けた方の約2割に見つかるほど多く、そのほとんどは良性です。ただし、良性かどうかは血液検査だけでは分かりません。超音波検査で大きさと性状を確かめ、細胞診が必要かどうかを判断します(甲状腺結節(しこり)のページ)。

出典

このページの執筆者

窪田純久(くぼたクリニック院長・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医・評議員)
窪田創大(医師・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医、日本内分泌学会専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医)

院長・窪田純久は、日本甲状腺学会の甲状腺結節取扱い診療ガイドラインの作成委員を務めました。甲状腺に小さな嚢胞が多発して甲状腺機能低下症の原因となる病態を報告し、多発嚢胞性甲状腺疾患(polycystic thyroid disease)として提唱しています。隈病院を受診した患者さんを対象とした研究では、この病態が顕性および潜在性甲状腺機能低下症の原因の約8%を占めることを報告しました(論文と院長による解説)。

院長は、甲状腺を専門としない医師に向けた専門書『やさしく解説 甲状腺疾患の診断と治療』(南江堂、改訂第2版・2025年)も執筆しています。

  • 執筆した医師の経歴などがある医師紹介はこちら
  • 院長自身による日本語の解説をつけた英文論文18編はこちら

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