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甲状腺の検査案内

甲状腺の検査について、はじめに知っておいていただきたい点は次の3つです。

  • 甲状腺の検査は、ホルモンの状態を見る血液検査と、形を見る超音波検査(エコー)の2つが軸になります
  • 全員に同じ検査をするわけではありません。どの検査をどこまで行うかは、症状、受診のきっかけ、これまでの経過をふまえて決まります
  • 当院では甲状腺ホルモンと甲状腺自己抗体を院内で測定しており、採血後約1時間で結果をご説明します

このページの内容

甲状腺の検査は「働き」と「形」の2つを見ます

 甲状腺の病気は、ホルモンの異常と、腫れ・しこりなど形の異常の2つの観点で考えると分かりやすくなります。検査もこの2つに対応していて、ホルモンの状態は血液検査で、形は超音波検査(エコー)で調べます。両方が同時にみられる方もおられます。

 この2つは、どちらか一方だけでは分からないことを補い合う関係です。たとえばTSH・FT4・FT3で甲状腺ホルモンが多いと分かっても、それが甲状腺の「つくりすぎ」によるものか、炎症でホルモンが「もれ出し」ているのかまでは、この3つだけでは決まりません。反対に、血液検査が正常でも、首の腫れやしこりがみられる方もおられます。また、超音波検査でしこりが見つかっても、そのしこりがホルモンをつくっているかどうかは、超音波検査だけでは分かりません。自己抗体、超音波の所見、これまでの経過を組み合わせ、必要に応じて追加の検査を行って確かめます。

 血液検査は、大きく「いま甲状腺がどう働いているか」を見る検査と、「なぜそうなっているか」を見分ける検査に分かれます。以下、順に説明します。

働きを見る検査(TSH・FT4・FT3)

 FT4・FT3は、たんぱく質と結合していない、実際に働ける形の甲状腺ホルモンです。血液中にどれだけあるかを調べます。

 TSH(甲状腺刺激ホルモン)は、甲状腺ではなく脳の下垂体(かすいたい)から出るホルモンで、甲状腺に「ホルモンをつくりなさい」と指令を出しています。甲状腺ホルモンが足りなければ指令は強まり、多すぎれば弱まるため、TSHと甲状腺ホルモンはシーソーのように逆方向に動きます。

 TSHとFT4を中心に、必要に応じてFT3もあわせて見ます。組み合わせて見るのは、片方だけでは判断できないためです。TSHは甲状腺機能の異常を鋭敏に映すとされており、甲状腺の検査でまずTSHを見るのはそのためです。ただし、このシーソーの関係が成り立つのは、脳(視床下部・下垂体)と甲状腺の間のやりとりが保たれている場合です。下垂体そのものに原因がある場合などは、TSHだけでは判断できません。

 TSHと甲状腺ホルモンの組み合わせをどう読むか、施設によって数値が少し違う理由については、健診でTSHの異常を指摘された方へでくわしく説明しています。

原因を見分ける検査(甲状腺の自己抗体)

 本来は細菌やウイルスに向かうはずの免疫のはたらきが、自分の甲状腺に向かってしまったときにつくられるたんぱく質を、自己抗体と言います。どの抗体が出ているかによって、考えられる病気が変わります。

  • TRAb(TSH受容体抗体)… バセドウ病の手がかりになります。バセドウ病では、甲状腺を刺激してホルモンをつくらせる方向にはたらく抗体として検出されます
  • TPOAb・TgAb(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体・抗サイログロブリン抗体)… 橋本病(慢性甲状腺炎)の手がかりになります

 どの抗体を調べるかは、症状と、TSH・FT4・FT3の結果によって決まります。TSHが低ければTRAbを、TSHが高ければTPOAb・TgAbを調べる、というのが基本的な考え方です。ただし、首の腫れ、妊娠の予定、これまでの甲状腺の治療などによっても変わります。すべての方に3つとも測るわけではありません。抗体が陰性であることは、甲状腺の病気がないことを示すものではありません。

 抗体についてくわしくは、次のページで説明しています。

 それぞれの病気の説明はバセドウ病・橋本病(慢性甲状腺炎)のページにあります。

あわせて調べることがある検査

 甲状腺そのものの検査に加えて、次のような項目を調べる場合があります。

  • 白血球・肝機能などの一般的な血液検査 … 抗甲状腺薬を使う場合は、治療を始める前と、始めたあとしばらくの間くり返し、副作用の確認のために調べます(バセドウ病)
  • サイログロブリン … 甲状腺の細胞がつくるたんぱく質で、しこりの評価の参考にします。ただし良性のしこりや甲状腺の腫れでも高くなるため、この数値だけで良性か悪性かを判断することはできません
  • コレステロールなどの脂質 … 甲状腺ホルモンが足りない状態では、コレステロールが高くなることがあります

形を見る検査(超音波検査・エコー)

 超音波検査(エコー)は、耳には聞こえない高い音を首にあて、その反射を画像にして甲状腺の形を見る検査です。次のような点を評価します。

  • 甲状腺全体が腫れているか、その程度
  • 甲状腺の中にしこり(結節)があるか。ある場合は大きさ、数、内部の性状
  • 甲状腺の内部の状態。炎症が起きているときには、内部の写り方が変わります
  • 甲状腺に流れ込む血流の多さ。バセドウ病では血流が増えていることが多く、炎症による「もれ出し」と区別する手がかりになります
  • 甲状腺のまわりのリンパ節の腫れ

 痛みはなく、所要時間は約15分です。首にゼリーをつけて行います。放射線を使わないため、妊娠中の方でも受けていただけます。

 首の前のふくらみやしこりに気づいて受診される方にとっては、この検査が中心になります。首には甲状腺のほかにもリンパ節や唾液腺(だえきせん)があり、さわっただけでは腫れの由来は分かりません。

どの検査を行うかは、症状ときっかけで決まります

 問診と診察のうえで、必要に応じて検査を行います。おおよその目安は次のとおりです。

受診のきっかけ 中心になる検査 補足
健診でTSHなどの異常を指摘された 血液検査(TSH・FT4・FT3、必要に応じて自己抗体) 健診の結果票をお持ちください。異常が続いているかを確かめます
動悸、汗、手のふるえ、体重が減るなどの症状がある 血液検査、必要に応じて超音波検査 自己抗体、超音波の所見、経過などを組み合わせて、「つくりすぎ」か「もれ出し」かを絞り込みます
だるい、むくむ、寒がりになる、体重が増えるなどの症状がある 血液検査(必要に応じて自己抗体) 甲状腺の腫れがある場合は超音波検査もあわせて行います
首の腫れ・しこりに気づいた 超音波検査+血液検査 しこりの性状によって、次に細胞診が必要かどうかを判断します
妊娠を考えている、妊娠中に指摘された 血液検査 時期によって考え方が変わります
甲状腺の手術を受けたあとの経過をみている 血液検査、必要に応じて超音波検査 手術の理由・範囲や病理検査の結果によって、確認する項目が異なります。分化型甲状腺がんの手術後では、サイログロブリンなどを経過観察の手がかりにします
甲状腺の薬を飲んでいて経過をみている 血液検査 薬の量の調整に用います。抗甲状腺薬を使っている場合は、副作用を確認する検査もあわせて行います

 ホルモンが多い状態のときに、それが甲状腺の「つくりすぎ」によるものか、炎症で「もれ出し」ているものかを見分ける流れは、甲状腺機能亢進症のページでくわしく説明しています。だるさが続いていて、甲状腺かどうかを迷っておられる場合はだるい・疲れやすいのは甲状腺?を、甲状腺の手術を受けたあとの検査については甲状腺がんの手術後の経過観察をご覧ください。どの科を受診すればよいかについては甲状腺の不調は何科?にまとめています。

さらに詳しく調べる検査

 症状や診察の所見、血液検査・超音波検査の結果に応じて、次のような検査が必要になることがあります。いずれも、全員に行う検査ではありません。

穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)

 細い針を刺してしこりの細胞を採り、顕微鏡で調べる検査を穿刺吸引細胞診と言います。良性か悪性かを推定するために行います。超音波で見ながら行い、短時間で終わります。具体的な方法は実施する医療機関によって異なります。しこりがあれば必ず行うわけではなく、大きさと超音波の所見に応じて必要性を判断します。判断の目安は甲状腺結節(しこり)のページでまとめています。

甲状腺シンチグラフィ

 放射性ヨウ素またはテクネチウムを用いて、甲状腺のどの部分がどれだけ活発に働いているかを調べる検査です。血液検査と超音波検査を組み合わせても区別が難しい場合や、しこりがホルモンをつくっているかどうかを確かめる必要がある場合に行います。当院では行っておらず、必要と判断される場合は隈病院をご紹介しています。甲状腺機能亢進症のページに、この検査を用いる場面を書いています。

 このほか、しこりが胸のほうへ伸びている場合や、周囲との位置関係を確かめる必要がある場合には、CTなどの画像検査を行います。当院ではCTを行っていないため、必要と判断される場合はご紹介しています。なお、しこりが良性か悪性かを判断するために、まず用いるのは超音波検査です。

検査値が症状や経過と合わないとき(お薬・サプリメントの影響)

 お薬やサプリメントの中には、甲状腺の検査値に影響するものがあります。特に、美容や髪・爪のために高用量のビオチンを含むサプリメントを使っていると、一部の検査方法では実際とは異なる値が出ると注意喚起されています。また、ヨウ素を含むお薬・うがい薬や、検査に用いる造影剤も甲状腺の検査値や、そのあとの検査の進め方に影響する場合があります。

 処方薬・市販薬・サプリメントを使っておられる場合や、最近これらを使われた場合は、受診の際にお知らせください。採血の前に中止する必要があるかどうかは、自己判断せず、医療機関の指示に従ってください。

検査をくり返し受ける意味

 甲状腺の検査は、一度受けて終わりとは限りません。理由は2つあります。

 第一に、1回の数値だけでは判断できない場合があるためです。TSHは体調や時期によっても動きます。健診で指摘された異常が本当に続いているのかを確かめるために、期間をあけてもう一度測ることがあります。

 第二に、治療中は数値の動きを見ながら薬の量を決めるためです。甲状腺の病気は、数か月から年の単位で経過を追っていくものが少なくありません。どのくらいの間隔で受けるかは、病気の種類、治療の段階、数値の安定の程度によって変わります。薬の量を調整している時期は短い間隔での確認が必要ですが、状態が安定してくると間隔をあけて経過をみることが可能です。

 いずれの場合も、以前の結果と並べて見ることで分かることもあります。可能であれば同じ施設で経過を追っていただくと、比較がしやすくなります。

当院で行える検査と、ご紹介する検査

 当院では、問診と診察のうえで必要な検査を当日に行っています。甲状腺ホルモンと甲状腺自己抗体(TPOAb・TgAb・TRAb)、サイログロブリンの迅速検査を院内で行っており、採血後約1時間で結果をご説明します。結果を聞くために再度ご来院いただく必要はありません。

  • 甲状腺ホルモン(TSH・FT4・FT3)の血液検査
  • 甲状腺自己抗体(TPOAb・TgAb・TRAb)の血液検査
  • サイログロブリンの血液検査(手術後などでは抗サイログロブリン抗体とあわせて評価します)
  • 白血球・生化学の検査(お薬の副作用の確認に用います)
  • 超音波検査(エコー)

 穿刺吸引細胞診、甲状腺シンチグラフィ、放射性ヨウ素を用いた検査・治療、手術が必要な場合は、隈病院をご紹介しています。ご希望の医療機関がある場合は、そちらへのご紹介も承ります。

受診されるときの準備

以前の検査結果をお持ちください

 健診の結果票や、以前に他の医療機関で受けた甲状腺の検査結果があれば、ぜひお持ちください。検査値は、施設や検査試薬によって少し違います。数値の変化が体の変化によるものか、測り方の違いによるものかを切り分ける手がかりになります。この点は健診でTSHの異常を指摘された方へでくわしく説明しています。

甲状腺のお薬は、採血のために飲み方を変えないでください

 甲状腺ホルモンのお薬(チラーヂンSなど)や抗甲状腺薬を服用中の方は、医師から別の指示を受けている場合を除き、採血に合わせて中止したり、飲む時間を変えたりせず、普段どおりに服用してください。受診の前がいつもの服用時刻でない場合に、採血のために先に飲んでいただく必要はありません。飲み忘れた日や、いつもと違う時間に飲まれた場合は、検査結果をみるときの参考になりますので、受診の際にお知らせください。

首まわりがあいた服装が便利です

 超音波検査では首全体にゼリーをつけます。前開きの服や、襟元がゆったりした服装だと検査がスムーズです。ネックレスは外していただきます。

妊娠中・妊娠の可能性がある方へ

 血液検査と超音波検査は、妊娠中でも受けていただけます。一方、放射性ヨウ素やテクネチウムなどの放射性医薬品を用いる検査は、妊娠中・授乳中の方、妊娠の可能性がある方では、適否や検査の時期の考え方が変わります。該当する方は、検査の前に医療機関へお伝えください。妊娠と甲状腺のページもあわせてご覧ください。

 受付から会計までの当日の流れと、お持ちいただくものは受診案内にまとめています。

よくあるご質問

検査はどのくらい時間がかかりますか
採血と超音波検査そのものは短時間で終わりますが、血液検査の結果が出るまで約1時間お待ちいただきます。この間は外出していただけます。受付から会計までの所要時間の目安は、初診で1〜2時間、再診で30〜60分です(受診案内)。

甲状腺に関する血液検査を食事をとってから受けても大丈夫ですか
大丈夫です。当院の甲状腺の検査では、絶食していただく必要はありません。食事をとってからお越しいただけます。甲状腺ホルモンや甲状腺自己抗体の検査は、食事の影響を受けにくい検査です。甲状腺以外の血液検査項目がある場合は、担当医師にお尋ねください。

検査は痛いですか
超音波検査に痛みはありません。採血の際は針を刺す痛みが多少あります。細胞診では、一般に採血と同じくらいの太さの針を使います。痛みの感じ方には個人差があります。

費用はどのくらいかかりますか
保険診療で行います。行う検査の種類と数によって変わりますので、お電話(0798-66-2233)でお問い合わせください。

検査だけを自費で受けることはできますか
当院では、診察のうえ、医師が診療上必要と判断した検査を保険診療で行っています。診察を伴わない、自費での検査のみのご希望には対応していません。気になる症状や健診の指摘がある場合は、その旨をお伝えのうえご受診ください。

紹介状は必要ですか
紹介状がなくても受診していただけます。お持ちの場合は、これまでの経過が分かるため診療の参考になります。

子どもも検査を受けられますか
採血が可能な年齢から診療しています。目安は小学生以上ですが、成長の度合いにもよります。未就学のお子さまについては、小児科や専門施設へご相談ください。

結果が基準範囲を少し外れていました。すぐに治療が必要ですか
基準範囲を少し外れているだけで、ただちに治療が必要とは限りません。数値の程度、症状の有無、原因となっている病気、これまでの経過をあわせて考えます。健診でTSHの異常を指摘された方へもご覧ください。

 当院は完全予約制です。ご予約はお電話(0798-66-2233)で承っています。

出典

このページの執筆者

窪田純久(くぼたクリニック院長・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医・評議員)
窪田創大(医師・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医・指導医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医)

院長・窪田純久は、甲状腺を専門としない医師に向けた専門書『やさしく解説 甲状腺疾患の診断と治療』(南江堂、改訂第2版・2025年)の著者です。日本甲状腺学会において、バセドウ病薬物治療・バセドウ病眼症診療・甲状腺結節診療・潜在性甲状腺機能低下症の各診療ガイドライン作成委員を務めています。

  • 執筆した医師の経歴などがある医師紹介はこちら
  • 院長自身による日本語の解説をつけた英文論文18編はこちら

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