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家族に甲状腺の病気の人がいる方へ

家族に甲状腺の病気の方がおられる場合について、はじめに知っておいていただきたい点は次の3つです。

  • バセドウ病や橋本病などの自己免疫性甲状腺疾患では、発症しやすさに遺伝的な要因が関わります。ただし、病気そのものが決まった形で受け継がれるわけではありません
  • 家族の中で重なることはありますが、ご家族に患者さんがおられるからといって必ず発症するわけではありません
  • 体質は変えられませんが、変化に気づける状態にしておくことはできます

なりやすい体質は遺伝しますが、それだけでは発病しません

 ご家族がバセドウ病や橋本病と診断されたとき、「自分にも遺伝するのだろうか」「子どもに伝わるのだろうか」と心配される方は少なくありません。

 日本内分泌学会は、「バセドウ病になりやすい体質は遺伝しますが、環境要因が加わって初めて発病します」と説明しています。橋本病についても同じ考え方が示されています。受け継がれるのは「なりやすさ」であって、病気そのものではありません。

 バセドウ病も橋本病も、免疫のはたらきが自分の甲状腺に向かってしまうことで起こります。同じ学会は、その自己抗体が作られる原因は分かっていない、とも説明しています。目の色や血液型のように、決まった形で受け継がれるものではありません。

 年代ごとの関わり方は年代・ライフステージ別にみる甲状腺の病気の「家族に甲状腺の病気の人がいる方へ」もご覧ください。

それでも、家族の中で重なることはあります

 一方で、なりやすい体質が家族の中で共有されることは知られています。

 以下の20〜40倍という説明は、甲状腺の病気全体ではなく、バセドウ病についてのものです。日本内分泌学会は、バセドウ病について「親、兄弟、祖父母がバセドウ病の方は、一般の人に比べて20〜40倍くらいバセドウ病になりやすいと言われています」と説明しています。数字だけを見ると大きく感じられますが、これはもともとの割合に対する倍率です。ご家族に患者さんがおられるからといって、必ず発症するという意味ではありません。

 バセドウ病と橋本病は、いずれも自己免疫性甲状腺疾患で、同じご家族の中で異なる病型がみられる場合もあります。

何がきっかけになるのか

 体質だけでは発症しません。日本内分泌学会は、バセドウ病について「なりやすい体質を持っている人が、何らかのウイルス感染や強いストレスや妊娠・出産などをきっかけとして起こるのではないか」と考えられているとし、「環境要因が加わって初めて発病します」と説明しています。

 橋本病についても、同じ学会が強いストレスや妊娠・出産、ヨウ素の過剰摂取(海藻類、薬剤、造影剤など)をきっかけとして甲状腺の働きが下がり、そこで橋本病が明らかになるのではないか、という考え方を示しています。

 ですから「家族に患者がいるから、いずれ必ずなる」ものでも、「きっかけを避ければ絶対にならない」ものでもありません。体質は変えられませんが、変化に気づける状態にしておくことはできます。

甲状腺のしこり・腫瘍の家族歴は、別の話です

 ここまでは、バセドウ病や橋本病といった甲状腺の働きに関わる病気の話です。甲状腺のしこり(腫瘍)については、考え方が変わります。

 甲状腺のしこりは良性のものがほとんどです。ただし「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024」は、家族歴や小児期の首への放射線治療を、判断のうえで確かめる事柄として挙げています。ただしごくまれに、家族の中で受け継がれるタイプの甲状腺の腫瘍が知られています。ご家族に甲状腺の腫瘍で手術を受けた方がおられ、その際に「家族性」「遺伝性」という説明を受けておられる場合は、そのことを診察の際にお伝えください。

 この場合は、働きの病気とは調べ方も進め方も異なります。当院では診察と血液検査、超音波検査までを行い、さらに詳しい検査が必要と判断される場合は、甲状腺疾患の専門病院である隈病院をご紹介しています。

家族歴があるとき、どうすればよいか

 症状がまったくない方全員に検査をおすすめするものではありません。ご家族に患者さんがおられるというだけで、すぐに調べなければならないわけではありません。

 一方で、次のような場合には、一度調べておく意味があります。

  • ご自身にも気になる症状がある(だるさ、動悸、体重の変化、寒がりや暑がり、首の腫れ)
  • 健診で甲状腺の数値を指摘された
  • ご家族に甲状腺がんの方がおられる、または「家族性」「遺伝性」と説明された甲状腺腫瘍の方がおられる
  • 妊娠を考えている、あるいは妊娠中である
  • お子さんに、落ち着きのなさ・学力の低下・身長の伸び方の変化がみられる

 調べ方は難しいものではありません。まず血液検査で甲状腺の働きを確認します。首の腫れ・しこりがある場合や、甲状腺の形を確認する必要がある場合は、超音波検査(エコー)を行います。当院では甲状腺ホルモンと甲状腺自己抗体を院内で測定しており、採血後約1時間で結果をご説明します。それぞれの検査で何を調べているのかは甲状腺の検査案内に、健診で指摘された方は健診でTSHの異常を指摘された方へにまとめています。お子さんについてはお子さんの甲状腺もご覧ください。

 どの科を受診すればよいか迷われたときは甲状腺の不調は何科?を、受付時間や持ち物などは受診案内をご覧ください。

よくあるご質問

母が橋本病です。私も必ずなりますか
必ずなるということはありません。なりやすい体質は遺伝しますが、日本内分泌学会も、そこに環境の要因が加わって初めて発病すると説明しています。気になる症状がなければ、すぐに調べなければならないというものでもありません。

子どもにも検査を受けさせたほうがよいですか
お子さんに気になる様子があれば調べる意味があります。落ち着きのなさ、学力の低下、身長の伸び方の変化は、お子さんの甲状腺の病気で知られている現れ方です。症状がまったくないお子さん全員におすすめするものではありません。なお当院で診療できるのは、採血を受けていただける年齢からです。

家族歴があると、どのくらいの間隔で調べればよいですか
決まった検査間隔があるわけではありません。ご家族の病名、血縁関係、ご自身の症状、妊娠の予定、これまでの検査結果などによって異なります。ご家族が甲状腺腫瘍について「家族性」「遺伝性」と説明を受けている場合は、健診の時期を待たず、その情報を医療機関へお伝えください。

血のつながりのない家族にも同じ病気がいます。関係ありますか
遺伝的な意味での家族歴にはあたりません。甲状腺に関係する症状や、ヨウ素を含む健康食品・お薬などを使用している場合は、その内容を診察時にお知らせください。

出典

このページの執筆者

窪田純久(くぼたクリニック院長・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医・評議員)
窪田創大(医師・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医、日本内分泌学会専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医)

院長・窪田純久は、甲状腺を専門としない医師に向けた専門書『やさしく解説 甲状腺疾患の診断と治療』(南江堂、改訂第2版・2025年)の著者です。日本甲状腺学会において、バセドウ病薬物治療・バセドウ病眼症診療・甲状腺結節診療・潜在性甲状腺機能低下症の各診療ガイドライン作成委員を務めています。

  • 執筆した医師の経歴などがある医師紹介はこちら
  • 院長自身による日本語の解説をつけた英文論文18編はこちら

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