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男性の甲状腺

男性の甲状腺について、はじめに知っておいていただきたい点は次の3つです。

  • 甲状腺の病気は女性に多くみられますが、男性にも起こります
  • 「女性の病気」という印象があるために、男性では思い浮かべられにくく、見過ごされやすい
  • 気をつける点は、女性とまったく同じではありません

「女性の病気」ではありません

 バセドウ病は20〜40代の女性に多くみられます。橋本病も女性に多くみられます。いずれも男性や高齢の方に起こります。

 それでも「甲状腺は女性の病気」という印象は根強くあります。男性では「甲状腺は女性に多い病気」という印象から、ご本人も周囲も甲状腺を原因として思い浮かべにくい場合があります。ホルモンが多くなる仕組みの全体像は甲状腺機能亢進症にまとめています。

 年代ごとの関わり方は年代・ライフステージ別にみる甲状腺の病気の「男性の甲状腺」もご覧ください。

男性では見過ごされやすい理由

 甲状腺の働きが乱れたときの症状は、働き盛りの年代でよくある不調と重なります。

  • だるさ、疲れが抜けない
  • 体重が変わった(増えた/減った)
  • 動悸がする、汗が多い
  • 集中しにくい、気力が続かない
  • 寒がりになった、むくむ

 だるさ、気力の低下、体重の変化、集中しにくさなどは、仕事の疲れ、睡眠不足、ストレス、貧血、男性ホルモンの低下など、さまざまな状態と重なります。

 もうひとつ、健診で甲状腺の数値を指摘されたまま、そのままにされている方がおられます。自覚症状がなければ、あとまわしになりやすいものです。健診で指摘された方は健診でTSHの異常を指摘された方へをご覧ください。だるさや疲れやすさについてはだるい・疲れやすいのは甲状腺?にまとめています。

男性更年期と症状が重なります

 だるさ、気力の低下、性欲の低下、集中しにくさ。これらは、男性ホルモンが下がることで起こる状態(男性更年期障害)でもみられます。甲状腺の働きの異常と症状が重なるため、どちらの可能性も考えておく意味があります。

 当院では、男性ホルモンの検査や治療は行っておりません。その可能性が考えられる場合は、ご専門の医療機関にご相談ください。当院でお引き受けできるのは、甲状腺の側に原因がないかを確かめることです。どちらか迷われる場合には、まず甲状腺機能の異常が関係していないかを血液検査で確認するという考え方もあります。

骨への影響は、女性と同じではありません

 甲状腺ホルモンが多い状態が続くと骨がもろくなることが知られていますが、その現れ方は男女で同じではありません。

 米国甲状腺学会(ATA)の2016年の診療ガイドラインは、潜在性甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンは基準の範囲におさまっているのに、甲状腺刺激ホルモンだけが低い状態)について、多くの研究では閉経後の女性で骨の密度の低下がみられる一方、男性や閉経前の女性では同様の低下は示されていないと記しています。ただし、骨の密度と骨折のしやすさは同じではなく、男性で骨折の増加を報告した研究もあります。

 これは「男性だから軽い」という意味ではありません。骨の密度と骨折は別の話で、同じガイドラインは骨折が増えたという報告には男性を対象にしたものも含まれると紹介しています。甲状腺ホルモンが多い状態そのものが体に負担であることは、男女で変わりません。同じガイドラインは、甲状腺刺激ホルモンが強く抑えられた状態が続いている方のうち、65歳以上の方や不整脈などの心疾患のある方には治療を行うことをすすめています。くわしくは甲状腺と骨をご覧ください。

パートナーの妊活と甲状腺

 ご夫婦で妊活・不妊治療に取り組んでおられる場合、男性側の甲状腺が話題になることがあります。甲状腺の働きの乱れは、男性でも体調に影響するためです。だるさ、体重の変化、動悸、寒がりなどの症状がある場合や、過去に甲状腺の異常を指摘されている場合は、甲状腺の働きを確認することがあります。

 当院では不妊治療そのものは行っておりません。精液の検査などについては、不妊治療にあたっておられる医療機関の判断によります。当院でお引き受けできるのは、甲状腺の側を確かめることです。まず血液検査で甲状腺の働きを確認し、首の腫れ・しこりがある場合や、甲状腺の形を確認する必要がある場合は超音波検査(エコー)を行います。妊活と甲状腺については妊活・不妊治療と甲状腺もご覧ください。

どのように調べるのか

 血液検査で甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンを測り、原因を見分けるための自己抗体をあわせて調べます。必要に応じて超音波検査(エコー)で甲状腺の形を確かめます。

 当院では甲状腺ホルモンと甲状腺自己抗体を院内で測定しており、採血後約1時間で結果をご説明します。結果を聞くために再度ご来院いただく必要はありません。それぞれの検査で何を調べているのかは甲状腺の検査案内に、健診で数値を指摘された方は健診でTSHの異常を指摘された方へにまとめています。代表的な病気はバセドウ病と橋本病です。

 どの科を受診すればよいか迷われたときは甲状腺の不調は何科?を、受付時間や持ち物などは受診案内をご覧ください。

よくあるご質問

男性で甲状腺の病気になるのは珍しいのですか
女性より少ないものの、男性にも起こります。むしろ問題になるのは、男性だからという理由で候補から外れてしまい、気づかれるまでに時間がかかることです。

健診でTSHを指摘されましたが、症状はありません
症状がはっきりしない場合でも、その状態が続いているかどうかを時間をおいて確かめます。年齢、心臓の状態、ほかにお持ちの病気によって、その後の考え方が変わります。

男性更年期かもしれないと言われました
症状が重なるため、どちらの可能性も考えておく意味があります。当院では男性ホルモンの検査・治療は行っておりませんが、甲状腺の側は血液検査で確かめられます。

薬を飲み始めたら、仕事に影響しますか
甲状腺ホルモンを補う薬は1日1回の内服で、量が適切であれば普段どおりの生活を送っていただけます。ホルモンを抑える薬を使う場合は、治療の初期に検査の間隔が短くなります。お仕事の都合はうかがったうえで進め方をご相談します。

出典

このページの執筆者

窪田純久(くぼたクリニック院長・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医・評議員)
窪田創大(医師・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医、日本内分泌学会専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医)

院長・窪田純久は、甲状腺を専門としない医師に向けた専門書『やさしく解説 甲状腺疾患の診断と治療』(南江堂、改訂第2版・2025年)の著者です。日本甲状腺学会において、バセドウ病薬物治療・バセドウ病眼症診療・甲状腺結節診療・潜在性甲状腺機能低下症の各診療ガイドライン作成委員を務めています。

  • 執筆した医師の経歴などがある医師紹介はこちら
  • 院長自身による日本語の解説をつけた英文論文18編はこちら

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