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月経の変化と甲状腺

月経の変化と甲状腺について、はじめに知っておいていただきたい点は次の3つです。

  • 月経が乱れる原因はさまざまです。甲状腺は、そのひとつです
  • 甲状腺の働きが下がっているときには、月経の量や周期に変化がみられると学会が説明しています
  • 月経が止まった、乳汁がにじむという場合にも、原因のひとつとして甲状腺が挙げられます

月経の変化には、さまざまな原因があります

 月経の周期が長くなった、短くなった、量が増えた、あるいは止まってしまった。こうした変化の原因は多く、そのすべてが甲状腺というわけではありません。

 ただし、甲状腺は全身の代謝を整えるホルモンをつくっている臓器です。その働きが乱れると、体のさまざまなところに影響が及びます。月経もそのひとつです。

 だるさ、体重の変化、寒がりや暑がり、動悸といった症状をあわせてお持ちかどうかは、手がかりになります。だるさや疲れやすさについてはだるい・疲れやすいのは甲状腺?を、ホルモンが多くなる病気については甲状腺機能亢進症にまとめています。

 年代ごとの関わり方は年代・ライフステージ別にみる甲状腺の病気の「月経の変化」もご覧ください。

甲状腺の働きが下がっているとき

 日本内分泌学会は、甲状腺機能低下症について「甲状腺ホルモンは、代謝の調節以外にも、妊娠の成立や維持、子供の成長や発達に重要なホルモンなので、甲状腺機能低下症では、月経異常や不妊、流早産や妊娠高血圧症候群などと関連し」と説明しています。

 具体的な現れ方として、同じ学会は過多月経を挙げています。同学会の橋本病の解説でも「甲状腺機能低下症になると…女性では月経過多になることがあります」と説明されています。経血の量が増えた、月経の期間が長くなったという変化です。当院の解説は橋本病(慢性甲状腺炎)にあります。

 ここで大切なのは、月経の変化が「甲状腺を調べる理由になる」という点です。甲状腺の働きが下がっていることは血液検査で分かり、整えることができます。月経の変化に気づいて受診され、甲状腺の状態が見つかる方がおられます。

月経が止まった・乳汁がにじむとき

 月経が止まる、妊娠していないのに乳汁がにじむ、またはその両方がみられる場合には、プロラクチンというホルモンが高くなっている状態(高プロラクチン血症)が原因のひとつとして考えられます。

 日本内分泌学会がまとめた「高プロラクチン血症の診断と治療の手引き」は、この状態の主な症候として、女性では月経不順・無月経、不妊、乳汁分泌を挙げています。そしてこの状態を引き起こす原因のひとつとして、甲状腺の働きが下がっている状態(原発性甲状腺機能低下症)を挙げています。

 プロラクチンの測定そのものは、当院では行っておりません。その検査や、原因を調べるための画像の検査については、婦人科や内分泌の診療を行っている医療機関にご相談ください。

 ただし、原因のひとつである甲状腺の働きについては、当院で確かめられます。同じ手引きは、原因が甲状腺の働きの低下である場合には甲状腺ホルモン製剤を投与するとしています。原発性甲状腺機能低下症が高プロラクチン血症の原因である場合は、甲状腺ホルモン剤による補充が治療の中心になります。そのあとは月経や乳汁分泌の経過を確認し、プロラクチンを再検するかどうかは、検査を行う医療機関で判断されます。

 なお、月経が止まる背景は、甲状腺の働きが下がっている場合だけではありません。日本内分泌学会は、バセドウ病について「女性では生理が止まることがあります」と説明しています。働きが強まっている側でも起こります。

 また、お薬が関わることもあります。高プロラクチン血症の手引きは、腫瘍以外でもっとも多い原因は薬剤であるとしています。服用しておられるお薬があれば、お薬手帳をお持ちください。

 月経が止まったときに甲状腺を思い浮かべる方は多くありません。けれども、血液検査で確かめられる原因のひとつです。当院でお引き受けできるのは、甲状腺の側を確かめることです。

婦人科で原因がはっきりしないと言われたとき

 月経の変化で、まず婦人科を受診される方が多いと思います。それは自然なことですし、婦人科でしか分からないことが数多くあります。

 そのうえで、調べても原因がはっきりしないと言われたとき、あるいは月経の変化とあわせて、だるさ・体重の変化・寒がりや暑がり・動悸・むくみといった症状があるときには、甲状腺を調べておく意味があります。

 なお、更年期の年代に入ると、月経の変化そのものが起こります。甲状腺の働きの乱れと更年期の症状は重なるため、どちらの可能性も確かめておく意味があります。年代・ライフステージ別にみる甲状腺の病気の「更年期の年代」もご覧ください。

 妊娠を考えておられる時期については妊活・不妊治療と甲状腺を、妊娠してからは妊娠と甲状腺の病気をご覧ください。

どのように調べるのか

 血液検査で甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンを測り、原因を見分けるための自己抗体をあわせて調べます。必要に応じて超音波検査(エコー)で甲状腺の形を確かめます。

 当院では甲状腺ホルモンと甲状腺自己抗体を院内で測定しており、採血後約1時間で結果をご説明します。結果を聞くために再度ご来院いただく必要はありません。それぞれの検査で何を調べているのかは甲状腺の検査案内に、健診で数値を指摘された方は健診でTSHの異常を指摘された方へにまとめています。甲状腺の働きが下がる代表的な病気は橋本病です。

 どの科を受診すればよいか迷われたときは甲状腺の不調は何科?を、受付時間や持ち物などは受診案内をご覧ください。

よくあるご質問

婦人科と甲状腺内科、どちらを先に受診すればよいですか
月経そのものの評価は婦人科の領分です。どちらが先ということはありませんが、月経の変化にあわせてだるさや体重の変化、動悸といった症状があるときには、甲状腺を調べておく意味があります。すでに婦人科で検査を受けておられる場合は、その結果をお持ちください。

甲状腺の治療をすれば、月経は戻りますか
甲状腺の働きが原因であれば、整えることで月経の状態も変わることが期待されます。ただし月経の変化には甲状腺以外の原因も多く、甲状腺を整えれば必ず戻るというものではありません。経過を見ながら判断します。

ピルを飲んでいますが、甲状腺の検査に影響しますか
ピルを含め、服用しておられるお薬は、検査結果を判断するうえで手がかりになります。自己判断で中止せず、お薬手帳などで診察の際にお知らせください。飲んでいるからといって検査を受けられないわけではありません。

月経の変化しかありません。それでも調べる意味はありますか
あります。甲状腺の働きの変化は、はっきりした自覚症状をともなわないまま進む場合があります。血液検査で確かめられますので、気になる状態が続いているのであれば一度ご相談ください。

出典

このページの執筆者

窪田純久(くぼたクリニック院長・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医・評議員)
窪田創大(医師・医学博士/日本甲状腺学会認定甲状腺専門医、日本内分泌学会専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医)

院長・窪田純久は、甲状腺を専門としない医師に向けた専門書『やさしく解説 甲状腺疾患の診断と治療』(南江堂、改訂第2版・2025年)の著者です。日本甲状腺学会において、バセドウ病薬物治療・バセドウ病眼症診療・甲状腺結節診療・潜在性甲状腺機能低下症の各診療ガイドライン作成委員を務めています。

  • 執筆した医師の経歴などがある医師紹介はこちら
  • 院長自身による日本語の解説をつけた英文論文18編はこちら

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