甲状腺結節(甲状腺のしこり)について
甲状腺のしこりについて、はじめに知っておいていただきたい点は次の3つです。
- 甲状腺のしこりは超音波検査を受けた方の約2割に見つかるほど多く、そのほとんどは良性です
- 良性で甲状腺の働きが正常なら、治療をせずに経過をみます
- 細胞診は乳頭がんの診断に特に有用ですが、濾胞腺腫と濾胞がんを、細胞診だけで区別することはできません。検査には得意・不得意があります
甲状腺結節(甲状腺のしこり)とは
甲状腺の中にできたしこりを結節といいます。良性のものも悪性のものも含む言葉です。甲状腺はもともと結節のできやすい臓器で、超音波検査では約2割の方に結節が見つかると報告されています。多くの方は気づかないまま普通に生活しています。
良性のものがほとんどですが、まれに悪性(甲状腺がん)が含まれます。超音波検査と必要に応じて細胞診を用いて、見分けていきます。
最近は、頸動脈のエコー検査や、ほかの目的で受けたCTで、たまたま甲状腺の結節が見つかることが増えました。治療する必要のないものまで見つかることが問題になっています。この点は後の「経過をみるという判断」でくわしくご説明します。
結節の種類
良性の結節には、主に次のようなものがあります。
- 腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)…甲状腺の組織が部分的に増えてできる良性の結節で、複数できることが多いのが特徴です
- 濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)…ふつうは1つだけできる良性腫瘍です。濾胞がんとは細胞診だけでは区別できません
- 嚢胞(のうほう)…中に液体がたまったものです
- 橋本病にともなう結節…橋本病で甲状腺の一部がしこりのようになることがあります
- 機能性結節…しこり自体が甲状腺ホルモンをつくるものです(プランマー病)
これらは超音波検査での見え方や、血液検査の結果をあわせて判断します。ただし、見た目だけで種類を確定できないこともあります。
症状
通常はしこり以外の症状がなく、痛みもありません。大きくなると、見た目が気になる、のどがつまる感じがする、といったことが出てきます。
ただし例外はあります。しこりの中に出血が起こると、急に腫れて痛みが出ることがあります。急に大きくなった、痛みが出た、声がかすれてきたという場合は、そのままにせず受診してください。
原因
多くの結節では、なぜできたのかを特定することはできません。食事や生活習慣に明らかな原因があるわけではありません。
一方で、甲状腺がんについては、いくつかの危険因子が知られています。小児期・思春期に首まわりへ放射線治療を受けたことや、遺伝的な要因(多発性内分泌腫瘍症2型にともなう髄様がんなど)です。ただしこうした要因がない方にも甲状腺がんは起こります。
検査でわかること
まず血液検査で、甲状腺ホルモン(FT4、FT3)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測ります。あわせて、サイログロブリンや甲状腺の自己抗体(TgAb、TPOAb)を調べます。結節があっても甲状腺の働きは正常なことが多く、血液検査だけで良性・悪性は判断できません。サイログロブリンは、良性の結節や甲状腺の腫れでも高くなることがあり、この数値だけで悪性かどうかを判断することはできません。
中心になるのは超音波検査(エコー)です。しこりの大きさ、数、形、内部の様子、血の流れを詳しく見ます。次のような所見があると、悪性の可能性を考えます。
- 形がいびつ(形状不整)
- 境界がはっきりしない、ぎざぎざしている
- 内部が黒っぽく見える(低エコー)
- 内部の見え方がまだらである
- 細かい白い点が多数みられる(微細高エコー)
- しこりのふちを取り巻く黒い帯が不整、またはない
あわせて、甲状腺がんの転移を疑うリンパ節がないか、しこりが甲状腺の外に出ている(甲状腺外浸潤を疑う)状態でないかも確認します。ここは大きさと同じくらい重要です。
なお、CT・MRI・PETは、しこりが良性か悪性かを判断する第一選択にはならず、これらの検査だけで確定診断することはできません。大きなしこりによる気管の圧迫や胸のほうへの広がり、手術の前に範囲を調べる目的などで使うことはあります。甲状腺のシンチグラフィも、しこりの良性・悪性の判断には用いません(機能性結節を疑うときには行います)。
超音波検査で何を見ているか、検査の受け方は甲状腺の超音波検査(エコー)で見ているものでまとめています。
細胞診をするかどうかの目安
細い針を刺してしこりの細胞を調べる検査を、穿刺吸引細胞診といいます。超音波で見ながら行い、一般には通常の採血と同じくらいの太さの針を使い、短時間で終わります。具体的な方法は実施する医療機関によって異なります。
結節があれば必ず行うわけではありません。「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024」では、大きさと超音波の所見にもとづいて、おおよそ次のように整理されています。
| しこりの大きさ | 細胞診を行うか |
|---|---|
| 5mm以下 | 行わず、経過をみます |
| 5mmを超え10mm以下 | 上に挙げた悪性の所見がほぼすべて当てはまるときに行います |
| 10mmを超え20mm以下 | 悪性の所見がどれか当てはまるとき、またはドプラ法でしこりの中への血流が確認されるときに行います |
| 20mmを超える | 行います |
中に液体がたまった嚢胞(のうほう)では、また少し考え方が変わります。液体だけで充実した部分がなければ、20mm以下は経過観察、20mmを超える場合は液体を抜く処置(穿刺吸引)を行います。細胞のある充実部分を含む場合は、その割合や大きさ、形などをあわせて、細胞診が必要かどうかを判断します。
大きさにかかわらず、甲状腺がんの転移を疑うリンパ節がある場合や、しこりが甲状腺の外に出ている(甲状腺外浸潤を疑う)場合には、しこりやリンパ節の細胞診を行います。また、見た目が典型的な良性のしこりであっても、20mmを超えたら一度は調べておくとされています。当院では血液検査と超音波検査までを行い、穿刺吸引細胞診が必要な場合は隈病院をご紹介しています。
細胞診でわかること、わからないこと
ここは誤解の多いところなので、少していねいに説明します。
細胞診は、甲状腺がんのなかで最も多い乳頭がんの診断に特に有用です。乳頭がんは細胞の核に特徴があり、細胞を見るだけで診断できることが多いためです。
一方、濾胞腺腫と濾胞がんを、細胞診だけで区別することはできません。濾胞がんかどうかは、しこりを包む膜や血管に腫瘍細胞が入り込んでいるかどうかで決まります。これは細胞をばらばらに取り出す細胞診では、原理的に見ることができません。そのため良性の濾胞腺腫と濾胞がんは区別がつかず、まとめて「濾胞性腫瘍」と判定されます。
大切なのは次の点です。「濾胞腺腫か濾胞がんか」を区別する目的で細胞診を何度繰り返しても、答えは出ません。検査のやり方が悪いのでも、施設の腕が足りないのでもなく、方法として不可能だからです。この場合は、しこりの大きさ、超音波の所見、大きくなる速さなどをあわせて、手術で調べるかどうかを相談します。
これとは別に、採取できた細胞が少なく判定できなかった場合には、時期をおいて細胞診をやり直すことに意味があります。「繰り返しても分からない」のは濾胞性腫瘍の区別に限った話で、細胞が十分に採れなかった場合とは異なります。
もうひとつ知っておいていただきたいことがあります。細胞診で良性と判定された後、しこりの大きさなど別の理由で手術を受けた方を調べると、2〜7%で手術後の検査では悪性と判明していたという報告があります。ただしこれは、何らかの理由で手術を受けた一部の方を調べた数字であり、細胞診で良性と判定されたすべての方に同じ割合が当てはまるわけではありません。良性という結果は「悪性の可能性がかなり低い」という意味であって、ゼロという意味ではありません。超音波所見やしこりの大きさ、その後の変化に応じて、必要な間隔で確認します。
経過をみるという判断
良性で、甲状腺の働きが正常で、大きさも症状も問題なければ、原則として治療は必要ありません。すぐに健康へ影響する可能性は低く、結節の大きさや超音波所見に応じて、超音波検査や血液検査で確認していきます。
「見つかったのに何もしないのは不安だ」と感じられるかもしれません。ここには理由があります。
甲状腺がん以外の原因で亡くなった方を調べると、小さな乳頭がんが約1割の方に見つかります。しかもその割合は1970年代から変わっていません。つまりもともと多くの人が持っていて、生涯なにも起こさないがんが存在するということです。
実際、超音波検査が普及した1980年代以降、世界各国で小さな乳頭がんが見つかる数は大きく増えました。ところが甲状腺がんで亡くなる方の数は、ほとんど変わっていません。韓国では、超音波検診が広く行われた結果、甲状腺がんが見つかる割合が15倍になりましたが、亡くなる方の数は変わりませんでした。
こうしたことから「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024」では、家族歴や小児期の放射線被ばくなど特別な危険がない、症状のない成人に対して、甲状腺がんを見つけるための超音波検診は行わないことが弱く推奨されています。
見つかったしこりを放置してよいという意味ではありません。調べるべきものは調べ、そうでないものは経過をみる。その線引きのために、上でご説明した超音波の所見と大きさの目安があります。
手術を考える場合
良性と診断された結節で手術を考えるのは、次のいずれかに当てはまり、十分な説明を受けたうえで、ご本人が手術を希望される場合です。
- しこりが大きい(4cmを超える)
- だんだん大きくなってきている
- 圧迫による症状や、そのほかの自覚症状がある
- 見た目が気になる
- しこりが胸のほうへ伸びている
- しこり自体が甲状腺ホルモンをつくっている(機能性結節)
- 血液中のサイログロブリンが非常に高い(1,000ng/mL以上)
サイログロブリンの高値は、しこりの大きさや経過とあわせて手術を考える要素のひとつです。この数値だけで甲状腺がんと診断するものではありません。
手術の範囲によって、後から必要になるものが変わります。片側(片葉)だけを切除した場合は、残った甲状腺だけでホルモンをまかなえる方が多くなります。すべて(全摘)を摘出した場合は、甲状腺ホルモン剤を生涯にわたって服用します。
手術では、出血、声を出す神経への影響、カルシウムを調節する副甲状腺の働きの低下などが起こる可能性があります。これらの起こりやすさは、切除する範囲やリンパ節を取り除くかどうかなどによって大きく異なります。実際の手術方法と、それぞれのリスクについては、手術を担当する医師から詳しい説明を受けてください。
甲状腺がんと言われた場合
甲状腺がんにはいくつかの種類があります。最も多い乳頭がんや、次に多い濾胞がんは、病状によって差はありますが、比較的ゆっくり進み、良好な経過が期待できるものが多くあります。一方、髄様がん、低分化がん、未分化がんでは、治療方針や経過が異なります。
さらに、成人の1cm以下の乳頭がんのうち、リンパ節転移や遠隔転移、明らかな甲状腺外浸潤がない超低リスク例については、すぐに手術をせず経過をみるという選択肢があります。これを積極的経過観察といい、ガイドラインは推奨度「強」で推奨しています。日本で始まり、現在は国内外で用いられている選択肢です。
ただし、1cm以下であれば誰でも対象になるわけではありません。気管や声を出す神経(反回神経)への浸潤が心配される位置にある場合、細胞診で悪性度の高いタイプが疑われる場合、リンパ節や別の臓器への転移がある場合などは、経過をみずに手術を検討します。しこりの位置や状態を詳しく評価し、経験のある医療機関で定期的な超音波検査と通院を続けられることを確認したうえで選択します。
国内の2,705人を追跡した研究では、しこりが3mm以上大きくなった方は5年で3.0%、10年で5.5%、15年で6.2%でした。リンパ節に転移が現れた方は15年でも1.1%です。この研究の観察期間内では、経過観察後に手術へ移行した方も含めて、甲状腺がんで亡くなった方はいませんでした。
これまでの観察研究では、積極的経過観察を選び、必要になった時点で手術へ移行しても、最初から手術を受けた場合と比べて、生命予後や手術後の再発に大きな差は示されていません。
積極的経過観察を続け、手術を受けずに済んだ方は、手術に伴う合併症を避けることができます。一方、実際に手術を受けた方同士を比較すると、最初から手術を受けた場合と、経過観察後に手術へ移行した場合とで、手術合併症に大きな差は示されていません。
積極的経過観察については、現時点で一律に終了できる年齢や期間の基準はありません。原則として長期にわたり、基本的には生涯、定期的な確認を続けます。通院を続けられるかどうかも含めて、相談して決めます。
手術を受けられた後の通院については、甲状腺がんの手術後の通院と検査で説明しています。
よくあるご質問
しこりががんである可能性はどのくらいですか
ほとんどは良性です。触ってわかる大きさのしこりよりも、検査でたまたま見つかった小さなしこりのほうが、悪性である割合は低くなります。ただし割合だけで決めることはせず、超音波の所見と大きさをみて、調べるかどうかを判断します。
良性と言われたものが、後から悪性に変わることはありますか
良性のしこりが途中から悪性に変化することは、ふつうありません。まれに、細胞診で良性とされた後、別の理由で手術を受けた方の中に、手術後の検査で悪性と判明する例が報告されています。はじめから含まれていたものを、細胞診では捉えきれなかった、という意味です。ただしこれは手術を受けた一部の方を調べた数字で、細胞診で良性と判定されたすべての方に同じ割合が当てはまるわけではありません。定期的に確認する理由はここにあります。
細胞診は痛いですか
局所麻酔を使わずに行うことが多い検査ですが、方法は実施する医療機関によって異なります。痛みの感じ方には個人差があります。検査のあとはしばらく圧迫し、当日はそのまま帰宅できます。数日のあいだ、押すと痛い、内出血が出るということはあります。
経過観察は何年続ければよいですか
良性の結節と、甲状腺がんの積極的経過観察とでは、考え方が異なります。良性の結節では、すべての方に共通する終了時期は決まっていません。超音波での見え方、しこりの大きさ、増大や症状の有無によって、検査の間隔と期間を決めます。長期間変化がなければ、検査の間隔をあけられることもあります。一方、甲状腺がんに対する積極的経過観察は、基本的に生涯続けることとされています。
CTやMRIで調べてもらえませんか
CTやMRI、PETは、しこりが良性か悪性かを判断する第一選択にはなりません。この目的には超音波検査が最も優れています。手術の前に広がりを調べるなど、別の目的で使うことはあります。
受診について
次のような場合は、甲状腺を診ている医療機関にご相談ください。
- のどぼとけの下あたりにしこりを触れる
- 健康診断や、ほかの検査で甲状腺のしこりを指摘された
- しこりが急に大きくなった、痛みが出た
- 声がかすれてきた、のどのつまる感じがある
甲状腺の病気は内科・内分泌内科で診ますが、どこにかかればよいか迷われることがあります。甲状腺の不調は何科を受診すればよいかで説明しています。
当院では、血液検査と超音波検査を行い、しこりの性状を詳しく評価します。穿刺吸引細胞診や手術が必要と判断される場合は、隈病院をご紹介しています。
出典
- 日本内分泌外科学会「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024」(日本内分泌外科学会雑誌 第41巻 増刊号)
- Horiguchi K, et al. Position paper from the Japan Thyroid Association task force on the management of low-risk papillary thyroid microcarcinoma (T1aN0M0) in adults. Endocr J. 2021;68(7):763-780
- Sugitani I, et al. Indications and Strategy for Active Surveillance of Adult Low-Risk Papillary Thyroid Microcarcinoma. Thyroid. 2021;31(2):183-192
- Ito Y, et al. Thyroid-Stimulating Hormone, Age, and Tumor Size are Risk Factors for Progression During Active Surveillance of Low-Risk Papillary Thyroid Microcarcinoma in Adults. World J Surg. 2023;47(2):392-401
- 木原実ほか.穿刺吸引細胞診で良性と診断された甲状腺結節の長期フォロー後の転帰.日本内分泌外科学会雑誌 2023;40(4):231-235
- Kubota S, et al. The Prevalence of Polycystic Thyroid Disease in Hypothyroid Patients with Negative Thyroid Autoantibodies. Thyroid. 2010;20(11):1205-1208
